研究課題/領域番号 |
21K13823
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩崎 悟 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (00845604)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 誘引忌避走化性方程式 / 時空間パターン解 / パルス型進行波解 / 構造保存スキーム |
研究実績の概要 |
誘引忌避走化性方程式とは,細胞性粘菌と誘引物質と忌避物質の三つの濃度分布の時間変化を記述する方程式であり,ミクログリアという細胞のダイナミクスを記述する数理モデルとしても知られている.既存研究により,定数定常解近傍での時空間パターン解の存在が示されているが,大きな振幅を持つ解,たとえばパルス進行波解などの時空間パターン解の形成メカニズムは詳しく分かっていない.本研究課題では,誘引忌避走化性方程式における時空間パターン解の形成メカニズムを,パルス解同士の相互作用,パルス解の中心座標の振る舞いを決定する低次元ダイナミクスへの帰着,により解明することを目指している. 誘引忌避走化性方程式の解には適当な保存量が存在し,パターン形成においてその保存量が重要な役割を持つことは明らかとなっている.よって,数値計算における近似計算でもその保存量を変化させない数値スキームを用いる必要があるが,この問題はKeller-Segel方程式に対する構造保存型の風上差分スキームを誘引忌避走化性方程式に拡張することで,空間一次元の問題に対しては既に克服した.現段階ではその計算スキームを用いて,パラメータを変えることによりどのような特徴的な解が得られるかということをある程度まで明らかにしている.空間一次元領域上の問題に焦点を絞り数値計算を行い,脈動パルス解や2つのパルス解同士の反発周期解,3つのパルスが反発しながら全体としてドリフトする解に加え,さらにそれよりも複雑な周期解が数値的に得られている.現在,上記の結果をまとめるための論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現時点では空間一次元の問題に対して,脈動パルス解やパルス解同士の反発周期解,さらにそれよりも複雑な「ドリフトする周期解」のような解が数値的に得られているが,そのような数値解から本研究課題の解決に結びつく本質的な問題意識を抽出することに難航している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においてはまずは数値解析に研究に焦点を当て,特に空間二次元の問題に対する構造保存型の数値計算プログラムを完成させ,学術的なインパクトを高めることを目指す.続いて,空間一次元の数値計算と空間二次元の数値計算で,本質的に異なる振る舞いをする解が現れるかどうかを探索する.なお研究代表者は,すでに構造保存型ではない簡易な数値計算プログラムで空間二次元の計算を行っており,その数値計算においては空間一次元とは本質的に異なる振る舞いをするパターン解が得られているが,そのような解が本当に解析的に存在するかどうかは定かではない(数値計算の離散化の影響などによって発生した偽の解かもしれない).そのため,空間二次元の問題の構造保存型の数値計算の解においても同様の解が得られるかを調べることにより,そういった解が元の方程式において解析的に存在する解であるという根拠を集める.その後,そのような解の存在性などの解析につなげていくことを計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
該当年度はコロナの影響でまだ活発に対面研究会が行われていない状況であったため次年度使用額が発生した.今後は対面開催の研究会も増えるため主に旅費に使用する計画である.
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