研究課題/領域番号 |
21K13838
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
内海 晋弥 学習院大学, 理学部, 助教 (90801176)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有限要素法 / スペクトル法 / クリロフ部分空間法 / 粘性係数依存性 / ストークス問題 |
研究実績の概要 |
本研究では,理論研究と産業応用の両面から重要な課題であるナヴィエ・ストークス方程式の近似解を,長方形に限らず応用上に現れる領域に対して,レイノルズ数が大きいときに高精度で求めることを目的としている.問題の解の良好な近似を行う際の基礎研究として,本年度は,ストークス問題に対する有限要素/スペクトル法を開発,実装し,粘性係数が小さいテスト問題において有効性を確かめ,連立一次方程式の求解効率まで考察した. 流速のガレルキン近似解を良好に求めるために,ストークス問題のような基礎的な流体問題であっても粘性係数が小さい問題,あるいは,大きな非回転成分を外力にもつ問題の解の高精度な近似に特別な配慮が必要になる.既存の理論において,粘性係数の逆数と圧力の近似能力を表す量の積が誤差の上界に現れることが知られている.これに従うと,圧力の近似度を上げると誤差を効率的に落とせることがわかる.しかし,圧力自由度を流速自由度に無関係に大きくすると,ストークス問題のガレルキン近似の適切性を保証する下限上限条件の成立度が悪くなる.そこで圧力には自由度が小さく精度が高いスペクトル法を用い,流速には領域に柔軟な有限要素法を用いる近似法を開発し,実装した.粘性係数が小さいストークス問題の解を良好に近似できることと、下限上限条件の成立とそこに現れる定数の大きさを数値的に確認した.さらに,問題を離散化した後の連立一次方程式の求解性能も比較した.これまでに報告者が研究してきた粘性係数の小ささに頑強なP2/P2安定化法と比較すると,最小残差法 (MINRES) の収束性がよいことが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有限要素/スペクトル法の実装を予定通り行い,テスト問題における精度とその求解効率は期待通りだったため,おおむね順調とした.
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今後の研究の推進方策 |
離散化問題の適切性を保証する下限上限条件の成立の検証を理論的に行う.これまで前例がないガレルキン近似の方法であるため新しい着眼点が必要であると考えられるが,適切なメッシュなどの条件を仮定し,hp型有限要素法との類似点を見つけながら文献調査し,適切な下限上限定数を見つける. 外力の波数が大きい場合に良好に近似を行うために,圧力を適切な小領域に区切る手法を開発する.流速と圧力に2つの異なるメッシュを用いる,新しい hp型有限要素法の開発とも考えられる.既存のhp型有限要素法と使えるメッシュの柔軟性などの観点から比較を行う. 曲有限要素近似と有限要素/スペクトル法の結合を行い,領域境界に曲線を含む場合においても対応可能にする.特に,円板などの障害物周りの流れには大きな圧力変動が生まれるので,スペクトル近似と曲有限要素近似の有効性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
対面での出張が予定よりも少なかった. 2022年度は現地での学会,研究集会が行われつつあるので,研究成果の周知と議論を行う.
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