研究課題/領域番号 |
21K13839
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
関坂 歩幹 明治大学, 研究・知財戦略機構(中野), 研究推進員 (00785107)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Maslov index / Stability index / 反応拡散系 / 複雑ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究では, 複雑ネットワーク構造の解明のために,ネットワーク上の拡散方程式や,ネットワークの連続極限をとった場合に現れる発展方程式に現れる拡散を表す作用素のスペクトルの性質を位相的手法により明らかにすることを目標としている. 位相的手法として,シュレディンガー方程式や反応拡散系の作用素の固有値問題で用いられるMaslov indexおよびStability indexを用いる.これらの位相的指数は,一般に無限次元Hilbert空間に対して定義されるFredholm-Lagrange Grassmann多様体あるいはFredholm Grassmann多様体の位相的性質を反映させて定義される.山本宏子氏との共同研究により,空間多次元の反応拡散系の固有値問題に対して構成される複素ベクトル束について,反応拡散系が多次元の有界領域上の拡散をコンパクト性を持つ積分方程式や周期性を持つ場合の時間微分で置き換えた場合でも同様の性質を持つベクトル束が構成可能であることが明らかになった. SandstedeとScheelらは,defect型の空間時間周期的進行波解を定義し,Evans関数によりそのスペクトル構造を調べている.そのような進行波解に対しても,本研究で行なったベクトル束の構成により,defect型進行波が複数の時間空間周期的進行波解に漸近するヘテロクリニック型の進行波解と捉え直し,各々の進行波に対してベクトル束を構成することで,Chern数のコボルディズム不変性によりスペクトル安定性を決定できる場合があることも明らかになった.それとは独立に,拡散が積分で表されるタイプの発展方程式に対しても,弱形式を用いることにより,ある種の重み付きL2空間などでは同様のベクトル束が構成できることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,初年度は現在知られているMaslov indexやStability indexが定義されている状況を詳しく調べ,その拡張可能性を詳細に調べることを目標にしていた.その結果として,既存の進行波界の安定性問題について,defect型進行波などへも拡張できることなどが明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は次のようにして複雑ネットワークの性質を調べていく. ・グラフなどのネットワーク上の拡散方程式やシュレディンガー方程式に対して定義される位相的指数を調べ,連続極限などを行なった際に,それらがどのように変化するかを調べる. ・多様体上の拡散方程式やシュレディンガー方程式の定常解に対する固有値問題と位相的性質が,多様体を変形してグラフへ特異極限を行なった際に,位相的性質がどのように変化するかを調べる. ・上記2つの性質の関係性を調べ,複雑ネットワークの各々の性質がどのように反映されたものかを明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型感染症(covid-19)の問題により,多くの研究集会がオンライン開催となったことや,半導体不足の問題によりコンピュータなどが納期未定などとなり,旅費,物品購入費などが予定より少なくなった.今年度は多くの研究集会が対面の形で実施される予定なので,それらに参加してより多くの情報共有や研究発表を行う予定である.半導体問題が落ち着いてくれば,必要に応じてPCを追加で購入する予定である.
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