最終年度の目標は,ヨスト解の構成を行い修正波動作用素を構成して弱収束定理を証明することだった.前年度までの分散関係の解析の成果と,縮小写像の原理を用いる事で,ヨスト解を構成することに成功した.この結果から,スプリットステップ量子ウォークは特異連続スペクトルを持たないこと,埋蔵固有値が存在しないことを証明することができた.この結果は量子ウォークは遠方に拡散をしていく状態か,動かずに同じ状態を保ち続ける状態の2つの状態によってのみ構成されていることを示すものである.その後ストーンの公式を用いて修正波動作用素を構成することができたが,弱収束定理を証明する所までには至らなかった.しかし,弱収束定理を証明する準備を整える所まではできたので,今後は可能な限り早く成果としてまとめ,論文として公表したい. 全体を通して,当初予定していた研究計画の9割を遂行することができた.また,当初の研究計画では想定していなかった問題について,一定の成果を挙げることができた.具体的にはスプリットステップ量子ウォークのWitten指数公式を明らかにした事,漸近的に周期的なスプリットステップ量子ウォークのフレドホルム指数公式を明らかにした事である.論文発表や研究会での発表を積極的に行なっていきたい.今後は弱収束定理の証明を完了させると共に,スプリットステップ量子ウォークに対して明らかにされてきた指数公式と弱収束定理との関連を明らかにしていきたい.
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