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2023 年度 実施状況報告書

非エルミート・トポロジーと強相関効果が誘起する新奇物性

研究課題

研究課題/領域番号 21K13850
研究機関京都大学

研究代表者

吉田 恒也  京都大学, 理学研究科, 准教授 (50733078)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード非エルミート系 / 強相関系 / トポロジカル物性
研究実績の概要

本年度の成果は以下の通りである。(i)二体相互作用で誘起されるリュウビリアン表皮効果の提案 (ii)相関効果の強い開放量子系における非エルミート表皮効果
(i)の「二体相互作用で誘起されるリュウビリアン表皮効果の提案」では二体ロスのある系でのリュウビリアン表皮効果を議論した。リュウビリアン表皮効果は非エルミート系特有のトポロジカル現象であり、試料端に局在した多数の局在モードに起因して特有のダイナミクスが見られる。本課題では、粒子間相互作用に起因した二体ロスが系に非自明なトポロジーをもたらし、リュウビリアン表皮効果を誘起することを数値計算により実証した。また、リュウビリアン表皮効果によって、粒子の動的な蓄積が一次元系の端で見られることを明らかにした。
(ii)の「相関効果の強い開放量子系における非エルミート表皮効果」では、ボソン系のモット絶縁体に関して非相反なホッピングの効果を解析した。その結果、モット絶縁体のパラメータ領域でも非エルミート表皮効果が見られることを明らかにした。また、モット絶縁体での非エルミート表皮効果は電荷の凍結により、特有のダイナミクスが見られることを数値シミュレーションで明らかにした。
以上は当初の計画から期待される成果である。これに加えて、本年度はトポロジカルメタマテリアルの研究も進展した。例えば、非線形固有値問題でのバルクエッジ対応や光メタマテリアルにおける非エルミートトポロジーがあげられる。メタマテリアルの一部は固有値が非線形になった非線形固有値方程式で記述される。これらは、量子系を含むこれまで議論されてきた線型方程式に従う系のトポロジカルバンド理論の枠組みの外にある。本課題ではそのような系でもバルク-境界対応が特定の状況下では成り立つことを証明した。また、光メタマテリアルにおける非エルミートバンド縮退に関する招待論文を上梓した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要で述べたように、開放系におけるリウビリアン表皮効果の研究では、多体相互作用が系に非自明なトポロジーをもたらし、非エルミート系特有の表皮効果が見られることを明らかにした。これは、多体相互作用と非エルミートトポロジーによって誘起される物性として興味深い。また、強相関系特有のモット絶縁体における表皮効果の研究も強相関系特有の非エルミートトポロジカル現象である。また、メタマテリアルにおけるバルク-エッジ対応の解明は、トポロジカル物性の舞台を非線形固有値問題に従う系へと拡げるものである。本成果をもとにした、非エルミートトポロジーへも拡張が見込まれ、意義深い。
上記のように、非エルミートトポロジーに関する研究は順調に進んでおり、当初予定していなかった成果もあげることができた。この点において、計画以上に進展していると考えている。その一方で、当初計画していた海外の機関に滞在して行う国際共同研究が先方との調節の都合上、本年度にずれ込んでいる。以上のことから全体の進捗状況は概ね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

これまでの非エルミートトポロジカル現象の研究成果をもとに、ダイナミクスを解析し研究を発展させる。特に、強相関効果で多様化した非エルミートトポロジカル物性が誘起する動的性質を明らかにする。このことで、観測へ向けた提案を目指したい。具体的なテーマとして以下は以下のものを考えている。
◇冷却原子系におけるリウビリアンダイナミクス:散逸のある冷却原子系などの開放系はリンドブラッド方程式で記述される。これまでに見出した強相関効果が効いたトポロジカル物性が誘起するダイナミクスを解析する。このことで冷却原子系での観測へ向けた提案を行いたい。
◇強相関電子系における散逸誘起トポロジー:開放系のトポロジーはこれまで人工量子系が中心であった。本研究では強相関電子系において開放系のトポロジーを研究する。特に、一次元・二次元の強相関電子系における開放系のトポロジーを探索したい。
また、上記の課題の遂行に加え、本年度に先方の機関に滞在し、国際共同研究を行う。具体的には、現在進行中の一次元強相関系の非エルミートトポロジーが誘起するダイナミクスを研究する。

次年度使用額が生じた理由

当初計画していた海外の研究機関への滞在が、先方との調節の結果本年度にずれ込んだため。本年度に行う、国際共同研究にともなう滞在費などへの使用を計画している。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)

  • [国際共同研究] チューリッヒ大学(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      チューリッヒ大学
  • [雑誌論文] Bulk-edge correspondence for nonlinear eigenvalue problems2024

    • 著者名/発表者名
      Takuma Isobe, Tsuneya Yoshida, and Yasuhiro Hatsugai
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 132 ページ: 126601

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.132.126601

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Point-Gap Topology of Non-Hermitian Many-Body Systems2023

    • 著者名/発表者名
      Shu Hamanaka, Kazuki Yamamoto, and Tsuneya Yoshida
    • 雑誌名

      New Physics: Sae Mulli

      巻: 73 ページ: 1178-1182

    • DOI

      10.3938/NPSM.73.1178

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Interaction-induced Liouvillian skin effect in a fermionic chain with a two-body loss2023

    • 著者名/発表者名
      Shu Hamanaka, Kazuki Yamamoto, and Tsuneya Yoshida
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 108 ページ: 9月7日

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.108.155114

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Non-Hermitian Mott Skin Effect2023

    • 著者名/発表者名
      Tsuneya Yoshida, Song-Bo Zhang, Titus Neupert, and Norio Kawakami
    • 雑誌名

      arXiv

      巻: 2309.14111 ページ: 1月15日

    • DOI

      10.48550/arXiv.2309.14111

    • 国際共著
  • [雑誌論文] Higher-order topological heat conduction on a lattice for detection of corner states2023

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Fukui, Tsuneya Yoshida, and Yasuhiro Hatsugai
    • 雑誌名

      Physical Review E

      巻: 108 ページ: 24112

    • DOI

      10.1103/PhysRevE.108.024112

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A symmetry-protected exceptional ring in a photonic crystal with negative index media2023

    • 著者名/発表者名
      Takuma Isobe, Tsuneya Yoshida, and Yasuhiro Hatsugai
    • 雑誌名

      Nanophotonics

      巻: 12 ページ: 2335-2346

    • DOI

      10.1515/nanoph-2022-0747

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Z2 non-Hermitian skin effect in equilibrium heavy-fermion systems2023

    • 著者名/発表者名
      Shin Kaneshiro, Tsuneya Yoshida, and Robert Peters
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 107 ページ: 195149

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.107.195149

    • 査読あり
  • [学会発表] 判別式による例外点の特徴づけ2024

    • 著者名/発表者名
      吉田恒也
    • 学会等名
      日本物理学会2024春季大会
  • [学会発表] 一次元ボソン系におけるモット表皮効果2024

    • 著者名/発表者名
      吉田恒也
    • 学会等名
      日本物理学会2024春季大会
  • [学会発表] 強相関系におけるトポロジカル物性2023

    • 著者名/発表者名
      吉田恒也
    • 学会等名
      強相関系におけるトポロジカル現象の進展
  • [学会発表] 強相関効果による非エルミートトポロジカル分類学のリダクション2023

    • 著者名/発表者名
      吉田恒也
    • 学会等名
      強相関電子系のフロンティア
    • 招待講演
  • [学会発表] メカニカルメタマテリアルにおける対称性と例外点2023

    • 著者名/発表者名
      吉田恒也
    • 学会等名
      オンライントポロジカルフォノニクス研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Fragility/robustness of exceptional points in correlated systems: reduction of topological classification2023

    • 著者名/発表者名
      吉田恒也
    • 学会等名
      Frontiers in nonequilibrium physics: Active matter, topology and beyond
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 強相関系における非エルミートトポロジー2023

    • 著者名/発表者名
      吉田恒也
    • 学会等名
      量子凝縮相研究における新潮流
    • 招待講演
  • [学会発表] 数値対角化を用いた強相関非エルミートトポロジーの解析2023

    • 著者名/発表者名
      吉田恒也
    • 学会等名
      物性研究所共同利用スパコン・CCMS合同研究会
    • 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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