研究実績の概要 |
本研究の目的は、ユークリッド空間の連続対称性を持たない有界領域における、理想電磁流体方程式の平衡解の存在条件を明らかにすることである。本課題に対して、2021年度では下記研究成果を上げた: 1.次世代核融合炉の設計において炉形の実現可否は炉内プラズマ支配方程式(理想電磁流体方程式)の平衡解の存在有無により決まる。しかし、優れた閉じ込め能力を持つとされている対称性を持たない炉形の支配方程式は、楕円双曲型であるため、平衡解の存在は未だ知られていない。本年度では、国際研究グループ Simons Collaboration on Hidden Symmetries and Fusion Energyとの共同研究により、局所領域における準対称性を持つ解の存在を証明した(N. Sato et al. Phys. Plasmas 28 112507 (2021))。 2.これまでの研究で開発した幾何学的束縛を受けた力学系の統計理論を応用し、一般相対性理論による時空間の歪みを持つ力学系の統計平衡を導出した(N. Sato, Class. Quantum Grav. 38 165003 (2021))。 3.本研究では正準ペア (p,q) によって構成されるハミルトン力学の位相空間を、正準トリプレット (p,q,r) を基盤とする位相空間に拡張し、その力学を数学的に定式化した (N. Sato, Prog. Theor. and Exp. Phys. 2021, 6, 063A01 (2021))。本研究は PTEP Editor’s Choice に選定され(賞PTEP Editor’s Choice Award (February 2022))、日本物理学会誌で紹介された(日本物理学会誌 Vol. 76, No. 12, 2021, p. 800.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度における本研究課題の主要研究目的は理想電磁流体方程式のユークリッド空間の連続対称性を持たない解析解を構築し、その幾何学的性質と次世代核融合炉の炉系の関係を明らかにすることである。雑誌論文 N. Sato et al. Phys. Plasmas 28 112507 (2021) で報告しているように、本目的は達成しており、圧力非等方性を持つ理想電磁流体における非対称平衡解の局所的存在を証明した。また、2022 年度の一つの研究目的である、非対称炉系におけるプラズマの統計的性質の解明を進めており、本目標の達成に向けて開発した統計理論を宇宙物理へ応用した研究を N. Sato, Class. Quantum Grav. 38 165003 (2021) で報告している。さらに、本研究ではハミルトン力学による理論解析が必要となるが、N. Sato, Prog. Theor. and Exp. Phys. 2021, 6, 063A01 (2021) ではハミルトン力学の拡張について報告しており、本研究は PTEP Editor’s Choice に選定され、日本物理学会誌で紹介される等、高い評価を受けている。これらの研究成果を踏まえて、当初の計画以上に研究が進展していると考えている。
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