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2021 年度 実施状況報告書

非平衡開放系における量子多体物性の非摂動手法に基づく研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K13859
研究機関東京大学

研究代表者

蘆田 祐人  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00845464)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード量子多体系 / 非平衡開放系 / 量子光学 / 統計物理
研究実績の概要

本研究の目的は、量子電磁場などの環境自由度と強く結合した量子系を解析するための理論手法を開発し、その応用により新奇な量子相や非平衡ダイナミクスを解明することである。初年度である今年度は、共振器中に閉じ込められた量子電磁場と物質が強く結合した物理系に着目し、任意の結合強度で適用可能な非摂動的枠組みを構築した。光と物質の超強結合領域は量子光学・固体物理・量子化学など幅広い分野で実験的にも実現しており、新奇物性探索の場として近年注目されている。特定の領域/物理系における理論が個別的に提案されてきた一方で、任意の結合領域/セットアップを包括的に記述する理論的枠組みは未だ構築されていなかった。本研究により量子的な光を用いた物性制御の可能性を理解するための枠組みが得られたが、この結果はこれまで精力的に調べられてきた「フロケ制御」の研究とも次の点で相補的である。即ち、後者では古典電磁場を周期外場として物質を駆動しその過渡的な物性変化を探るため不可避的な温度上昇(ヒーティング)が問題となるが、前者では真空量子電磁場環境に基づく制御を行うためこのような問題は生じない。以上の成果は2編の論文としてまとめ、1編はPhysical Review Letters 誌より出版され、もう1編は現在国際誌で査読中であり、また国内外での招待講演やセミナーなどを通しても発表された。一方で、統計物理の研究においても一定の成果が得られ国際誌より論文として出版され、また開放系の物理に関する包括的な概説論文も執筆し、こちらはAdvances in Physics誌より出版された。さらに理論を量子散逸系にも応用し数値的繰り込み群と汎関数繰り込み群を組み合わせることで、これまで論争となっていた基底状態の相図を決定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度の計画として当初想定していた、量子電磁場モードが単一の場合にとどまらず、より解析が挑戦的な連続・複数の量子電磁場モードを有した場合に理論を展開することに成功したため。これにより共振器量子電磁力学のみならず超電導回路や導波管量子電磁力学など、最先端の量子光学系で実現しているより広いクラスの問題の強結合領域が解析できるようになった。よって、当初の計画以上に研究が進展していると判断するのが妥当である。

今後の研究の推進方策

本年度に構築した理論的枠組みにより、共振器物質系の強結合領域の解析が可能となったため、今後は量子電磁場との強い相互作用により具体的にどのような新しい物理現象が生じるのかを明らかにしてゆく。具体的には、本年度に構築した強束縛模型に基づき、共振器中でのベリー位相や量子幾何、さらには近藤効果など磁性の量子光物質相互作用による制御の可能性を探索する。一方で、電磁場が連続的な場合に関してもさらに研究を進め、新規な非平衡ダイナミクスや散逸現象の発見を目指す。

次年度使用額が生じた理由

当初、今年度に行う予定であった国内外の研究機関への滞在や国際・国内会議への参加がCOVID-19の流行により現地開催が困難となったかあるいは中止を余儀なくされた。このため当初の使用計画から大幅な変更が生じたため。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Cavity Quantum Electrodynamics at Arbitrary Light-Matter Coupling Strengths2021

    • 著者名/発表者名
      Ashida Yuto、Imamoglu Atac、Demler Eugene
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 126 ページ: 153603

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.126.153603

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Non-Hermitian physics2021

    • 著者名/発表者名
      Ashida Yuto、Gong Zongping、Ueda Masahito
    • 雑誌名

      Advances in Physics

      巻: 69 ページ: 249~435

    • DOI

      10.1080/00018732.2021.1876991

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Higher-order efficiency bound and its application to nonlinear nanothermoelectrics2021

    • 著者名/発表者名
      Kamijima Takuya、Otsubo Shun、Ashida Yuto、Sagawa Takahiro
    • 雑誌名

      Physical Review E

      巻: 104 ページ: 044115

    • DOI

      10.1103/PhysRevE.104.044115

    • 査読あり
  • [学会発表] Shedding quantum light on quantum materials2022

    • 著者名/発表者名
      Y. Ashida
    • 学会等名
      the 3rd International Symposium on Dynamics of Artificial Quantum Systems (DAQS2022)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Hermitian and non-Hermitian topological phenomena in active matter,2022

    • 著者名/発表者名
      Y. Ashida
    • 学会等名
      APS March meeting 2022
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 例外表面モードに保護されたトポロジカルレーザー2022

    • 著者名/発表者名
      曽根和樹, 蘆田祐人, 沙川貴大
    • 学会等名
      日本物理学会2022年年次大会
  • [学会発表] ジョセフソン接合における量子相転移の非摂動くりこみ群解析2022

    • 著者名/発表者名
      増木貫太, 數藤広之, 押川正毅, 蘆田祐人
    • 学会等名
      日本物理学会2022年年次大会
  • [学会発表] Nonequilibrium dynamics and thermalization in open quantum many-body systems2021

    • 著者名/発表者名
      Y. Ashida
    • 学会等名
      META 2021
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] バンドトポロジー由来の非線形トポロジカル同期2021

    • 著者名/発表者名
      曽根和樹, 蘆田祐人, 沙川貴大
    • 学会等名
      日本物理学会2021年秋季大会
  • [学会発表] 差分進化を用いた最適なナノ熱機関の探索2021

    • 著者名/発表者名
      蘆田祐人
    • 学会等名
      ディープラーニングと物理学オンライン
    • 招待講演
  • [備考] 東京大学蘆田研究室

    • URL

      http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/ashida-g/home.html

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公開日: 2022-12-28  

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