本研究は表面イオントラップ上での原子イオンと光共振モードの強結合状態の実現に向け、その要素技術となる半導体ミラーの微細加工および集積技術、レーザーアブレーションによる真空汚染の少ない原子発生手法を開発するものである。2021年度にはイオントラップ系の構築を完了し、ストロンチウム原子イオンの捕獲に成功したほか、レーザーアブレーションを用いることで、真空環境の汚損を最小限にとどめつつも単一のストロンチウム原子イオンのみを82%の確率で捕獲できることを示した。この成果はJournal of Physics Communications誌に査読付き論文として掲載された。また、2022年度にはレーザーアブレーションをファイバ導波されたパルスレーザーを用いて行い、ストロンチウム原子が発生することおよび派生したストロンチウム原子の速度分布を定量的に明らかにした。これによりレーザーアブレーションのための余分な自由空間光学系の削減が可能であり、この成果はApplied Physics Letters誌に査読付き論文として掲載が決定した。半導体ミラーの微細加工及び集積に関しても、転写可能な形に半導体ミラーを微細加工することに成功している。この半導体ミラーの金電極上への集積手法を転写プリント及びダイボンディングで試み、どちらの手法でも集積に成功した。しかしながら集積された半導体ミラーを用いて構築した微小光共振器のフィネスは500と低く、オーバーエッチングやオゾンアッシングに起因するクリッピングロス、ミラー表面におけるレジスト残滓などが問題であると考えられる。
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