研究課題/領域番号 |
21K13864
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
浅川 寛太 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50817046)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スピン偏極 / 強磁性体 / 光誘起脱離 / アルカリ金属 / 表面 |
研究実績の概要 |
MgO(100)表面にFe3O4薄膜を製膜し、その表面にRb原子を吸着させ、光誘起脱離の観測を目指した。蒸着には電子ビーム蒸着法を用い、薄膜の結晶性は反射高速電子回折法を用いて確かめた。 次に、X線光電子分光法を用いてFe3O4(100)表面に吸着したRbの状態を調べた。その結果、低被覆率では陽イオン、高被覆率では中性原子として吸着していることが明らかになった。これは、被覆率を変えることによってRbの吸着メカニズムを制御できることを意味している。また、紫外光照射によって光誘起脱離したRb原子を、プローブ光(Rb D2遷移線(780.245nm)に周波数ロックしたレーザー)を用いた方法とLangmuir-Taylor検出器を用いた方法の二通りの方法で検出することに成功した。次に、パルスレーザー(Nd:YAGレーザー、355 nm)を用いて脱離原子の飛行時間分布を調べ、脱離原子の速度分布がパルスレーザーの強度に依存することを明らかにした。さらに、脱離原子の速度分布は、当初予想していた値(数千m/s)より一桁小さいことが明らかになった。これは、Nd:YAGレーザーによって誘起された脱離が熱的な脱離であるか、非熱的な脱離と熱的な脱離成分が混在しており、パルスレーザーの強度を変えるとそれらの割合が変化することを示唆している。そのどちらであるかを明らかにするのは今後の課題である。 さらに、脱離原子のスピン偏極度を測定するための装置開発を行った。完成した装置の性能評価のため、光ポンピングによってスピン偏極させたRb原子のスピン偏極度を測定し、十分な性能を持っていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初1年目に予定していたFe3O4表面上のRb吸着状態の解明は、成功している。また、2年目に用いる装置の開発にも成功しており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目には、1年目に開発した装置を用いて光誘起脱離したRbのスピン偏極度を測定する。また、1年目に明らかになった、脱離原子の速度のパルスレーザー強度依存性や、脱離原子の速度が異常に遅い原因を明らかにするために、Rbの光誘起脱離メカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、X線光電子分光法のみで1年目の研究計画を遂行できたため、紫外光電子分光法用の紫外光源を購入する必要がなくなったためである。 翌年度分として請求した助成金と合わせて、真空関連の消耗品や光学部品の購入、Nd:YAGレーザーのメンテナンス費に用いる予定である。
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