研究課題/領域番号 |
21K13869
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
脇舎 和平 岩手大学, 理工学部, 准教授 (50781465)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非クラマース二重項 / 多極子 / 超伝導 / 超音波測定 |
研究実績の概要 |
立方晶PrT2X20(T: 遷移金属, X = Zn, Al)では、電気四極子秩序と超伝導が共存することから、四極子(軌道)自由度と超伝導の相関に注目が集まっている。PrT2X20の結晶場基底状態は非磁性の非クラマース二重項であり、多極子の自由度のみをもつという特徴がある。本研究では、新たに発見された非クラマース二重項系である立方晶PrRu2A2Zn18 (A = Sn, In)について、RuやAを別の元素に置き換えた新物質を合成する。さらに、その物性を系統的に調べることで、非クラマース二重項系で発現する超伝導と軌道自由度の相関を探る。本年度は主にPrRu2In2Zn18について、超音波を用いた弾性定数測定を行なった。これまでの研究では、磁化率の温度依存性からPrRu2In2Zn18の結晶場基底状態が非磁性であることが明らかになっていた。しかし, 非クラマース二重項基底状態が実現しているかについては決定的な証拠が得られていなかった。今回行なった超音波測定では、10 K以下で弾性定数の明瞭なソフト化が観測された。このことはPrRu2In2Zn18の結晶場基底状態が、電気四極子の自由度をもつ非クラマース二重項であることを強く示唆する。この結果から、これまでに非クラマース二重項基底状態をもつことが明らかとなっていたPrRu2Sn2Zn18に加えて、A = In系も軌道自由度と超伝導の相関を探る上で適した化合物であることを確認することができた。今後はA = Inの化合物についてRuを別の元素に置き換えた化合物を重点的に合成し、非クラマース二重項基底状態をもつ新たな物質群の開発を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始年度から研究代表者の所属機関が変更となったため、試料合成に関する実験環境の構築に時間を要し、特に物質合成に関する研究については当初予定よりも遅れが生じている。一方、現所属機関ですでに確立されていた超音波実験の環境を用いることで、これまでに明らかになっていなかったPrR2In2Zn18の結晶場基底状態に関して新たな知見が得られるなど、想定以上の研究成果が得られた部分もあった。これらを勘案して、現在までの進捗状況をやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べたように、試料合成に関しては当初の研究計画よりも遅れが生じている。本年度中に研究計画の遂行に必要となる試料合成環境を整えることができたため、次年度は試料合成に関する研究計画の実行を急ぎ本年度の遅れを取り戻す。一方、超音波測定環境を利用できたことで想定よりも早く得られた研究成果については、国内外での学会発表や投稿論文としての成果公表を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年3月に現地開催予定であった日本物理学会が、新型コロナウイルス(オミクロン株)の感染拡大によりオンライン開催に変更となり、確保していた旅費が必要なくなったため次年度使用額が生じた。次年度使用額については、次年度の学会での成果公表に必要となる旅費と実験を行うために必要となる寒剤・試料合成用原料などの消耗品に使用する。
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