研究課題/領域番号 |
21K13874
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
車地 崇 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (90750373)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スキルミオン / マルチフェロイクス / 熱ホール効果 / マグノン / ワイル半金属 / ネルンスト効果 |
研究実績の概要 |
磁性ワイル半金属や磁気スキルミオン物質においては、運動量空間あるいは実空間の電子状態のトポロジーにより生み出される非自明な熱輸送・熱電特性が期待できる。本年度ではこれらの特性を明らかにするために熱輸送測定を行うための測定系の立ち上げを行った。カンタムデザイン社製PPMS内の高真空下で断熱条件でサンプルに熱流を流せるようにサンプルパックP101/3Aに熱浴および輻射シールドを取り付け、温度差測定用熱電対と熱浴測定用温度計の配線をした。ここから取り出した電気信号をナノボルトメーターでモニターすることにより熱流印加時のサンプル内の温度差および電位差を測定することができる。 作成したセットアップを使用して大学院生と協力し反強磁性ハニカム絶縁体をフローティングゾーン法により作成し、磁気転移に伴う熱伝導度および熱ホール効果の測定を行った。これにより測定系のテストを行うことができる。熱伝導度の測定は問題なく行えることが確かめられた。一方熱ホール効果の測定に関しては検出感度の向上が必要と考えられる。 さらに最近合成に成功した磁性ワイル半金属候補物質のゲルマニウム化合物の熱電効果およびネルンスト効果の測定を行った。電気抵抗測定であらかじめ予測されていた半金属的振る舞いがみられ、強磁性秩序由来の大きなネルンスト効果も観測することができた。これは異常ホール効果の観測とも整合性があり、本系の磁性ワイル半金属としての可能性を強化している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
共同研究した大学院生の貢献もあり測定系のセットアップは完成し、順次候補物質をテストする段階に入ることができた。また運よく有望な新規物質も見つけることができたため、今後はこれらの物質の物性解明に集中することができる。
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今後の研究の推進方策 |
反強磁性ハニカム格子絶縁体の測定に関しては観測されている熱ホール効果の真偽をはっきりさせるために非磁性類似物質の合成と測定を行い、比較検証していくことを計画している。磁性ワイル半金属候補物質のネルンスト効果の測定は磁性イオンを置換した同型物質を測定しながら系統性を確認し、近々行う予定の強磁場下での量子振動測定および共同研究者との第一原理計算およびARPES測定を通して電子状態との関係を明らかにする予定。
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