• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

トポロジカル磁気構造が誘起する量子輸送現象

研究課題

研究課題/領域番号 21K13875
研究機関東京大学

研究代表者

仲澤 一輝  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (70884964)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードスピンカイラリティー / スピン流 / 非線形輸送 / 反強磁性体 / トポロジカルスピンホール効果 / キタエフ模型 / マヨラナ粒子 / ワイル半金属
研究実績の概要

本年度は(量子)輸送現象に焦点を当てた次の3テーマについての研究を推進した.(1)反強磁性体においてネールベクトルのカイラリティーが引き起こすトポロジカルスピンホール効果,(2)交代磁場を印加したキタエフスピン液体における熱輸送現象,(3)強磁性ワイル半金属Co3Sn2S2の原子層薄膜における輸送現象.
(1)ネールベクトルのカイラリティーによる伝導電子系のスピンホール効果について,スピンホール伝導率の解析的表式がベクトルカイラリティーで記述され,磁化と伝導電子の相互作用が弱い場合(弱結合)には伝導電子スピンのdephasingが重要であることを指摘した.また,磁化構造の波長が短い場合に,電子の拡散的運動が支配的になる領域を見出した.現在論文準備中である.
(2)交代磁場と一様磁場をキタエフ模型に印加した場合に,マヨラナ粒子の励起スペクトルが波数空間で非対称に歪むことを指摘した.また,磁場の強度や角度を変えることによって励起スペクトルを制御でき,マヨラナ粒子による熱流の線形・非線形成分を測定することによってそれを検出できることを提案した.この内容は国内・国際学会,プレプリントサーバarXivにて公表した.また,年度をまたいでしまったが最近Phys. Rev. B誌に掲載された.
(3)Coがカゴメ面を形成し,時間反転対称性を破ると同時にフェルミ準位近傍にワイル点を有する強磁性ワイル半金属Co3Sn2S2の原子層薄膜における輸送現象を第一原理計算に基づいて調べた.単層・2層の場合に異常ホール伝導度を計算し,薄膜表面を構成する原子の違いによって輸送係数の振舞いや磁性が異なることを見出し,学会にて公表した.現在3層系についても調べており,現在論文準備中である.
このほか,非線形輸送現象のフォーマリズムについても現在取り組んでおり,次年度以降のアウトプットを目指している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

反強磁性磁化構造の誘起するトポロジカルスピンホール効果について,強結合から弱結合までの物理的な描像を明らかにすることができ,もうすぐ取りまとめが完了するところまできた.また,非線形輸送現象を場の量子論に基づくファインマンダイヤグラムの方法を用いて系統的に計算する方法の探索についても目途が立った.さらに,電荷スピン結合系にとどまらず,マヨラナ粒子系においても非線形輸送現象という観点を含めて調べることができ,今後の本プロジェクトの発展に資する結果を得た.

今後の研究の推進方策

非線形伝導度については,電流・熱流などの非線形領域にまでアクセスできる“公式”をまず導出することを目指し,いくつかのベンチマークをとる.この際,不純物散乱によるバーテックス補正による効果にも注意を払う.その後,ボルツマン理論などの既存の方法との比較を行う.
つぎに,上の公式を具体的なケースに適用していく.例えば,カイラル磁性体(スカーミオン,ヘッジホッグ等),ワイル半金属,キタエフ模型におけるマヨラナ粒子系などを想定している.また,第一原理計算と組み合わせて具体的な物質に適用していくことも視野に入れて定式化を行う.

次年度使用額が生じた理由

本年度は,感染症蔓延の影響で,参加した学会がすべてオンラインによって行われ,出張の機会がなかった.また,今年度はフォーマリズムの構築にリソースを割いたため,最低限のデバイス購入にとどまった.(第一原理計算などを念頭に置いた)高コストの計算を実行するためのコンピュータは次年度以降に検討することにした.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] Thermal transport in the Kitaev spin liquid under a staggered magnetic field2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Nakazawa, Yasuyuki Kato, and Yukitoshi Motome
    • 学会等名
      APS March meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 強磁性ワイル半金属Co3Sn2S2の原子層薄膜における異常ホール効果の理論解析2022

    • 著者名/発表者名
      仲澤一輝, 加藤康之, 求 幸年
    • 学会等名
      日本物理学会第77回年次大会
  • [学会発表] Thermal transport in the Kitaev spin liquid under a staggered magnetic field2021

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Nakazawa, Yasuyuki Kato, and Yukitoshi Motome
    • 学会等名
      International Conference on Quantum Liquid Crystals 2021 (QLC2021)
    • 国際学会
  • [学会発表] 交代磁場下のスピン液体が示す非対称なマヨラナ励起と非相反熱輸送2021

    • 著者名/発表者名
      仲澤一輝
    • 学会等名
      キタエフ量子スピン液体研究の新展開
    • 招待講演
  • [学会発表] 強磁性ワイル半金属Co3Sn2S2薄膜の第一原理計算:構造最適化と有効模型解析2021

    • 著者名/発表者名
      仲澤一輝,加藤康之,求幸年
    • 学会等名
      日本物理学会2021年秋季大会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi