研究課題
本研究では、粒子性を持つ渦状スピン構造体、スキルミオンが自発的に形成するスキルミオン結晶を利用したマグノン制御を目指している。昨年度は、キラル構造を伴う磁性体Cu2OSeO3の準安定スキルミオン結晶相において磁気共鳴測定を行い、マグノンモード混成の観測に成功した。磁気スキルミオンのスピンテクスチャは結晶構造の対称性に依存することが知られており、キラル構造の下ではBloch型、極性構造のもとではNeel型と呼ばれる磁気スキルミオンが発現する。磁気スキルミオン結晶相におけるマグノンダイナミクスは、異なるスピンテクスチャに対して変化することが期待される。そこで本年度は、極性構造のもとで発現するNeel型スキルミオン結晶相の磁気共鳴ダイナミクスの解明を目指した。具体的には、極性構造を伴う磁性体VOSe2O5の単結晶試料において、マイクロストリップライン用いたマイクロ波分光測定を行った。その結果、Neel型スキルミオンの三角格子相において2種類の磁気共鳴モードを観測することに成功した。さらに、実験で観測した共鳴モードの周波数分布や選択則を理論計算によって非常によく再現することに成功し、従来のBloch型スキルミオンの三角格子相とは異なるダイナミクスを示すことが明らかになった。また派生した成果として、中性子散乱実験によって4回対称な磁気反射が観測されている温度・磁場領域においても同様の共鳴モードを発見した。これは、Neel型スキルミオンの四角格子相の発現を強く示唆しており、VOSe2O5における2種類のスキルミオン相の実現が実証された。この他、上記の系と比べて一桁小さい、数nm周期のスキルミオン結晶を伴う新物質の発見にも成功しており、今後、ナノ周期のスキルミオン結晶のもとでのマグノン特性の解明・制御など、本研究成果の波及効果が期待される。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
Physical Review B
巻: 107 ページ: L020410-L020410
10.1103/physrevb.107.l020410
巻: 1070 ページ: 104421-104421
10.1103/physrevb.107.104421