本研究では、申請者が見出した半金属Ta2PdSe6が低温で示す巨大熱電電力因子の起源について、放射光X線回折実験、および元素置換効果の観点から調べた。ゼーベック効果の測定から、室温では電子、低温では正孔が支配的なキャリアになることが示唆されるが、結晶構造は室温と低温でほとんど変化がなく、この変化はバンド構造起因ではないことが分かった。申請者の構築した簡易的な2キャリアモデルでTaサイトにNbを置換した際の効果を調べると、電子に対する正孔の移動度の大きさをパラメータとして定量的に解析可能であることが分かった。このことは、移動度をパラメータとした新しい低温用熱電物質の設計指針を提示している。
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