研究課題/領域番号 |
21K13883
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
成田 秀樹 京都大学, 化学研究所, 特定助教 (80846709)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超伝導 / ノンコリニア磁性 / 強相関電子系 / スピントロニクス |
研究実績の概要 |
本研究は、ノンコリニア(非共線的)な磁気構造におけるヘリシティに関連する自由度が巨視的位相の制御、すなわち超伝導状態のON/OFFや、超伝導電流制御に有効であることを実証することを目的としている。 超伝導体/ノンコリニア磁性体/超伝導体の構造を持つジョセフソン接合素子の作製に向けて、始めに超伝導体/強磁性体/超伝導体の積層膜において、超伝導と強磁性が共存する試料作製条件の最適化を行った。また、超伝導体として極性構造を持つ超伝導多層膜を用いた試料作製にも取り組んだ。 極性構造を持つ超伝導体では、空間反転対称性の破れによって非相反電荷輸送現象が期待できる。今回作製した極性超伝導体/強磁性体/極性超伝導体の積層膜では、強磁性体の磁化と電流方向に依存して、臨界電流に非相反性が生じる超伝導ダイオード効果が観測可能であることを明らかにした。また、強磁性体の磁気状態を制御することによって、無磁場においても超伝導ダイオード効果を実証することに成功した。 臨界電流の磁場依存性には、強磁性体の磁化に依存した磁気ヒステリシスが現れ、非相反臨界電流は符号反転を伴う複雑な磁気ヒステリシスを示すことが明らかとなった。この複雑な非相反臨界電流の振る舞いは、磁気ドメインの複雑さを反映している可能性があり、さらに磁性層の膜厚や組み合わせを最適化していくことによって、ノンコリニア磁性を用いた超伝導ダイオード効果の制御に繋がることも期待される。 無磁場における超伝導ダイオード効果の実証に成功したことは、電流という単純な制御パラメータで、超伝導体において空間反転対称性の破れと磁性による超伝導体への寄与をプローブできることを意味するだけでなく、超伝導論理回路への応用にも繋がる意義のある重要な成果であると言える。 以上の研究成果を論文にまとめ、現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画通り、超伝導/ノンコリニア磁性/超伝導の構造を持つ素子作製と、その評価に向けて試料作製条件の最適化を行った。その上で、超伝導体に極性超伝導体を用いた場合に、磁性によって超伝導電流の非相反性を制御できることを明らかにしたことは、本年度の研究計画以上に進展して円滑に推進していると言える。 本結果についてまとめた論文も現在投稿中であり、成果発表への準備も着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はノンコリニア磁性に加え、極性超伝導体も組み合わせたジョセフソン接合素子に関しても研究計画を発展させて取り組み、超伝導ダイオード効果が発現する微視的なメカニズム、及び巨視的位相の変化の証拠となる臨界電流密度の温度依存性に現れるディップ構造を解明することで、ヘリシティを利用した巨視的位相の制御を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で学会がオンライン開催または延期になったことと、研究状況の変更から物品購入を来年度に繰り越したことにより次年度使用額が生じた。次年度では購入予定の物品の購入、学会の旅費に使用する予定である。
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