研究課題/領域番号 |
21K13892
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松本 充央 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 特命助教 (00898463)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 温度応答性高分子 / 液-液相分離 / 光ピンセット / 光圧 / 光熱効果 |
研究実績の概要 |
本研究では、レーザー光を温度応答性高分子の水溶液中に集光することで形成される特異な相分離液滴の形成メカニズムを解明することを目的としている。本年度は、所属機関の変更に伴う光ピンセット装置の再構築とプラズモン加熱を利用した局所相分離の実験に取り組んだ。 倒立顕微鏡に対して532nmの可視光レーザーを導入し、金ナノ粒子が分散したポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)の水溶液中に集光した。そして、光捕捉の様子をCCDカメラによって観察した。近赤外レーザーを用いた光捕捉の場合、集光レーザーを照射して水を局所加熱すると、集光スポットの周囲で相分離が誘起され、高分子液滴が形成される。その後、形成された液滴は光圧によって集光スポットに捕捉される。これに対し、プラズモン加熱を用いた場合、レーザー光を集光すると、初めに溶液中の金ナノ粒子が単一に捕捉され、その後、捕捉された金ナノ粒子の周囲にPNIPAMが集まった。その結果、マイクロサイズの液滴として集光スポットに捕捉された。金ナノ粒子の非存在下では、このような挙動は見られなかった。これは、局在表面プラズモン共鳴による光熱変換によって、捕捉された金ナノ粒子の周囲のみに局所的な温度勾配が形成されたためと考えされる。また、得られた液滴の形態は、近赤外レーザーによる通常の光ピンセットの場合とは異なるように見えた。今後は、このような液滴の構造を分光学的な観点から調査することともに、光圧や熱勾配の空間分布が相分離構造に与える影響についてより詳細に解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の影響で予定していたレーザー機器の追加調達ができず、また、所属機関の異動に伴う設備環境の変化によって、予定していた実験の一部を遂行できなかった。しかしながら、現有のレーザーや設備でプラズモン加熱を利用した光捕捉実験は実施できているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度調達できなかったレーザー機器に関しては、すでに入手の目途が立っており、研究計画の骨子である光ピンセット装置は概ね完成している。今後は、所属機関の異動による設備環境の変化に対応するため、計画している研究課題の詳細について再検討を行い、目的の達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、レーザー機器の調達が予定通りにできなかったため、次年度に繰り越しとなった。繰り越し分は、次年度に改めて当該のレーザー機器の購入費用に充てる。
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