研究課題/領域番号 |
21K13894
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
小林 史明 大分大学, 理工学部, 助教 (30898101)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 液晶 / 液晶乱流 / 乱流 / 非平衡 / レオロジー / 負の粘性 |
研究実績の概要 |
本年度の研究により,まず当初の解決すべき疑問であった『負の粘度は一般に他の液晶で発現するか?』を解決することが出来た.様々な液晶を購入し,電場を印加しながら粘性測定を行ったところ,シッフ塩基系以外の液晶である,フェニルエステル系液晶のD-402(東京化成工業製)とフッ素系の混晶であるLCN#3216(株式会社LCC社製)で負の粘度が発見された.この発見により,シッフ塩基系以外の液晶でも負の粘度の発現が確認された.シッフ塩基系の液晶は加水分解する弱点を有しているが,これらの液晶はシッフ塩基系の液晶に対して耐久性が高く,応用面でも液晶を用いた薄型無機構モーターへの実現に一歩近づくことが出来た. これらの成果の一部は日本物理学会2022(春)で発表済みで,国際学会ILCC2022でも発表予定である.今後の展開としては,今までの研究では負の粘度を発現するのはシッフ塩基系の液晶しか見つかっておらず,シッフ塩基系の液晶特有の加水分解による不安定性や物質の単一性による物性値の制御の範囲が狭さにより,基礎と応用の両面で大きな制約が掛かっていた.しかし,物性値の異なるフェニルエステル系のD-402やフッ素系の混晶LCN#3216で負の粘度および自発回転が発見されたことから,より幅広いレンジで物性値を制御することが可能になった.更に,フェニルエステル系液晶D-402はそれ自身及びその同族液晶が市販されていることから,これらを混ぜ合わせることで液晶の粘度など物質の少量ドープだけでは制御が困難な物理量の制御も可能である.フッ素系の混晶LCN#3216に関しては,商用の液晶とほぼ同じ組成のため耐久性が高いと考えられ,混合比や組成を変えた混晶の作成及び発注を行い,フッ素系の混晶でどれくらいまで回転速度やトルクなどが制御可能か,可能性を確かめて行きたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により,従来のMBBAなどシッフ塩基系液晶以外でも2種類の液晶(一つは単体,もう一つは混晶)負の粘度及び自発流れの存在は確認できた.これは,一つの前進である.しかしながら,当初,予定していたシッフ塩基系液晶で細かく導電率や誘電異方性を変えて,レオロジー測定を行うことは遂行できなかった.だが,導電率を今までよりも更に大きくさせたサンプルにおいて,レオロジー測定を行った際に,今までの結果と異なり,降伏応力様の特性が確認された.このような結果は今までに筆者の知る限り報告例はなく,新規性のある現象が発見された.総じて,さらなる研究の展開先が開拓されたという点で,本年度は進展があった.よりスピードを上げて研究の遂行を行いたい.
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今後の研究の推進方策 |
理論的に負の誘電異方性を有する液晶で,負の粘度が発生するのは予測されており,本年度の研究で発見された負の粘度を発現する液晶は,その通り負の誘電異方性を有するものであった.しかしながら,負の誘電異方性を有する液晶であっても負の粘度を示さなかったり,従来のシッフ塩基系液晶では,電場振幅に対して,単調に負の粘度の絶対値は減少していたが,非単調な電場依存性を示す液晶もあった.すなわち,単純に負の誘電異方性を有していれば,負の粘度が発現するということは否定された.今後は,さらにどのような物性値を有する液晶が負の粘度を発現するのか調べて行きたいと検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
学内助成金等採択し,資金的余裕が出来たため.また,測定機器を一部借りることで経費を浮かすことが出来たため.次年度は,ケミカルインピーダンスメータと高圧アンプの2つを購入する予定である.
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