研究課題/領域番号 |
21K13894
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小林 史明 九州大学, 理学研究院, 助教 (30898101)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ソフトマター物理学 / 液晶 / レオロジー / 流体物理学 / 非平衡物理学 |
研究実績の概要 |
本年度はネマチック液晶(MBBA,EBBA)にイオン性物質をドープして,その導電率を大きくしたサンプルに交流電場を印可すると,液晶セル(導電性物質のITOがコートされた透明電極ガラス2枚で液晶をサンドイッチしたもの)(セルギャップ:100 μm)の中に巨大な渦が発生することが明らかになった.実際に微粒子を液晶サンプルに混ぜて観察を行うと微粒子が回転(公転)運動していることが分かった.これまでの研究では,電場を印可することが出来る,Anton Paar社製のカスタマイズされたレオメーター(回転粘度計)MCR302WESPで同様の電場を液晶サンプルに印可する実験を行っており,この場合では下面が固定されているが,上面側は回転することが出来る.これまでの研究では上面下面が固定されている場合では前述の渦流れが発生しなかった.しかしながら,共同研究者の折原らはITOガラスをエッチングして,1 mm×1 mmの正方形の電極を作成して,同様の実験を行った際に正方形の空間内に渦流れが発生することを確かめている.更に本研究では最大で直径が20 mmの円形ITOの電極でも渦流れが発生が発生していることが確かめられた.加えて,ドーナツ型にエッチングを行った場合でもドーナツに沿うような一方向の流れが発生することが分かった.今後の展開としては,2通りの展開を検討している1つは電極の形状をより複雑にすること,もう一つはITOの面積を系統的に変化させてPIV等を用いて渦流れの速さの変化を調べることを検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は2回ほど研究機関の移動があり,着任時に於ける実験環境の再整備が必要となった.それに伴い研究が遅れてしまった.しかしながら,上下の電極面を固定した場合でも渦流れが観測され,電極面積を20 mmと大盤にしても,ドーナツ型にしても流れが発生することが確認されたことは今後の研究の方向性が増えたと言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては,この度発見された上下が固定されたセルでの渦流れを研究することを考えており,電極をレーストラック型,三角形など複雑な電極形状での実験を行いたい.また,流速の分布の電極面積依存性も測定したいと検討している.また,研究計画にもある通り,様々な分子構造を持つ液晶での測定も行う.測定に必要な実験装置の整備はほぼ完了している.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究機関の移動に伴い,購入予定の装置が不要になったため.
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