研究課題/領域番号 |
21K13896
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
根本 文也 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 助教 (50615672)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中性子反射率 / 薄膜 / 構造解析 / 両親媒性分子 / 分光 |
研究実績の概要 |
本研究では、イオン液体の薄膜を作製し、その物性を明らかにすることを目的とする。そのため、物性、構造の形成過程、薄膜のガラス転移挙動を調べるため、短時間・非接触で実施可能かつ簡便に薄膜構造を解析する手法が必要となる。その候補として小型分光器による薄膜の構造解析手法を、モデル系である高分子薄膜系に対して検討した。その結果、薄膜単体では測定原理上の限界があるものの、適切な厚さをもつ熱酸化膜をあらかじめ基板上に準備することで、薄膜の厚さを精度よく評価できることが確かめられた。また、薄膜の厚さのスピンキャスト速度に対する依存性を調べることにより、単分子薄膜を作製するために最適な速度を決定するための手がかりを得た。続けて、スピンキャストによる薄膜形成は非平衡過程であるため、リザーバーである溶液層から薄膜が形成された後の平衡状態を調べ、薄膜が溶媒から基板上に一様に展開する素過程を明らかにすることが重要となる。そのために、疎水性の溶媒から両親媒性分子が吸着する挙動を、中性子反射率測定と偏光顕微鏡観察により調べた。オゾン照射により強く親水化された基板上では、両親媒性分子が単分子膜を形成すること、溶媒に対してある程度分子配向が伝達されることがわかった。加えて予備的な検討として、水溶液からの吸着挙動を中性子反射率によって測定した。両親媒性分子に添加した異種分子の効果により、吸着単分子膜が二重膜へと変化することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、構造解析の手法と基板へ分子が吸着する機構についてはおおむね予定通りの成果を挙げている。一方、材料不足の影響から冷却装置の納入が2021年度末になった上に、講座で所有する誘電率測定装置が2台故障し、修理や新規購入が必要となる。ただ、新たな機器の購入に関しては、近年の半導体素子不足の影響により遅れる可能性が高い。したがって、誘電率測定を使用した微視的ダイナミクスの研究についてはやや遅れる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
構造解析手法やそのための基礎情報が整ったため、実際にフラストレートを利用したイオン液体の薄膜を作製し、目的とする単分子膜・二分子膜の実現を目指す。続けて、納入された冷却装置と分光法による構造解析手法を組み合わせ、膜厚の温度依存性を調べることにより、作製した薄膜のガラス転移挙動を明らかにしていく。この情報から、薄膜の分子ダイナミクスに関する機構のモデル化が期待される。誘電率を使用した分子スケールの微視的ダイナミクスの研究に関しては、機器が納入され次第システムを構築し進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19により学会等が中止・オンライン開催へ変更され、出張旅費を使用する必要がなくなったため。
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