研究課題/領域番号 |
21K13908
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
針谷 達 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20757108)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フィルタードパルスアークプラズマ / RFプラズマCVD / Qカーボン / アモルファスカーボン / 機能性薄膜 |
研究実績の概要 |
Qカーボンは,強磁性を示す超硬質アモルファスカーボンである。しかし,ナノパルスレーザーアブレーション法を用いた合成例しか報告がなく,レーザー照射面に対し部分的に得られるのみである。本研究では,プラズマ成膜プロセスにおいて,堆積膜最表面層の温度条件を制御することで,薄膜状のQカーボンを創製し,プラズマプロセスによるQカーボン合成条件を明らかにする。Qカーボンは,従来材料以上の高機能表面保護膜や,磁気抵抗ランダムアクセスメモリなどの次世代デバイス材料になり得る可能性を持っており,薄膜化によって,これらQカーボン応用の劇的な進展が期待できる。 2021年度では,シングルパルス照射可能なアークプラズマ源と,RFプラズマ電極ステージを組み合わせた成膜装置の作製を目的とし,設計と物品選定および組み立てを実施した。アークプラズマ源には,自己電流型フィルタードパルスアークプラズマ源を採用し,パルス制御を容易にした。基板ステージには,RF電圧を印加するための改良を施した。パルスアークプラズマ用電源およびRFプラズマ用電源をそれぞれ準備した。一方で,新型コロナウイルスの影響などにより,選定した装置排気系物品等の入手が困難となり,最終的な装置の立ち上げ,実験の開始には至っていない。今後は,物品の再選定・購入後,装置排気系を組み立て,装置全体の立ち上げ,成膜実験を行っていく予定である。また,アークプラズマ照射による基板表面温度を制御するための冷却用ガス導入機構の作製にも取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,アークプラズマ源とRFプラズマ源の両方を備えた成膜装置の立ち上げから,成膜実験の開始までを予定していたが,当初予定していた物品の購入や納品が,新型コロナウイルスの影響により,入手困難や大幅な遅延が生じたため,装置の立ち上げに至らず,予定していた実験を開始できていない。装置の大部分の組み立ては完了しており,必要な装置物品が揃い次第,装置を立ち上げ,成膜実験を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では,予定の遅れている装置立ち上げを完了し,成膜実験を開始する。作製した成膜装置を用いて,電極ステージ上でのRFプラズマCVDによる低密度カーボン層形成と,アークカーボンプラズマのシングルパルス照射を交互に繰り返すことでQカーボン層を積み上げ,Qカーボン薄膜の形成を試みる。アークプラズマのイオン電流測定や,RFプラズマの発光分光分析から,Qカーボン合成プラズマ条件を明確にする。合成したQカーボン薄膜は,ラマン分光法やXPS,SEM・TEM観察による膜構造解析と,ナノインデンターによる膜硬さ測定や振動試料型磁力計による磁気特性測定などの膜特性分析を行う。また,基板表面温度制御のひとつとして,冷却用のガス導入機構の作製にも取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定したターボ分子ポンプについて,新型コロナウイルスの影響等により,納期の大幅な遅れが見込まれ,再選定が必要になったため。繰越額については,再選定後,あらためてターボ分子ポンプの購入に使用する予定である。
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