研究課題/領域番号 |
21K13913
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
原田 了 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 基礎科学特別研究員 (80844795)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超新星爆発 / 数値相対論 / 流体力学 / ニュートリノ輸送 / ニュートリノ観測 |
研究実績の概要 |
本研究は、超新星爆発を経て中性子星が生まれる過程を第一原理的、つまり一般相対論的かつボルツマン方程式に基づくニュートリノ輸送シミュレーションで解明することを目指すものである。具体的には、ニュートリノ用のボルツマンコード、流体力学方程式を解く流体コード、重力のためにアインシュタイン方程式を解く数値相対論コードから構成されるシミュレーションコードを開発し、それを用いた星の重力崩壊シミュレーションを行う。初年度にはそのコードを開発を進めつつ、比較用の非相対論的なシミュレーションを様々な角度から分析した。第二年度においては、開発したコードを実行し、中性子星の安定性やブラックホールの形成過程など、いくつかのテスト計算を進めて、開発したコードに混入していた問題や、初期条件を設定するための方法など、実際のシミュレーションを進める上で重要な課題となるものを解決した。 また、超新星爆発と中性子星形成の過程を調べる上では、観測的なアプローチも欠かせない。そのために、本課題の一環として、将来観測されるであろうスーパー/ハイパーカミオカンデでの超新星ニュートリノデータを解析するための公開コードを開発した。これは中性子星形成過程の超新星の物理量を大まかに推定するものであり、将来実際に超新星ニュートリノが観測された暁には、このコードで推定された物理量を与えるような設定のもとで本研究のシミュレーションモデルを多数構築し、観測を説明できる最良のモデルを効率的に探せるようになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に開発した数値相対論+流体コードを使用し、中性子星の安定性とブラックホール形成のテスト計算を行った。この過程でコードに含まれていた問題点を改善し、初期条件の設定方法等を確立した。テスト計算には当初計画以上の時間がかかっているが、ここで問題を解決しなければ実際の複雑な重力崩壊計算では問題点がどこにあるかわからない状態になってしまっていたため、遠回りに見えてもこれが最も研究を効率的に進められる方法である。さらにこのコードをボルツマン方程式ソルバーと結合する作業まで完了し、実際のシミュレーションを行う目前まで研究を進められている。 また、中性子星形成過程においては超新星ニュートリノが放射され、これはこの過程を調べる上で重要な観測的手がかりである。本研究の目的を達成するには、そのような観測データを解析し、理論を観測から確かめる必要がある。そのために、中性子星の質量や半径を推定するための公開解析コードを開発した。観測データを詳しく調べるためには、本研究で行うような詳細なシミュレーションを多数行い、観測データをもっともよく説明できるものを探す必要があるが、シミュレーションには大きな計算コストがかかる。この公開解析コードは中性子星の質量と半径に大まかなあたりを付けることで、詳細なシミュレーションによる観測データのフィッティングを効率よく行えるようにする。 以上のように、最終的に超新星爆発と中性子星形成過程を調べるために必要なステップは順次着実に踏んできており、研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
開発したコードによって星の重力崩壊から超新星爆発、そして原始中性子星形成過程までをシミュレーションによって調べる。また、このシミュレーションを含めた様々なアプローチによって、中性子星形成過程からの超新星ニュートリノ観測データ解析手法をさらに改良していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題で用いるコードの詳細なテスト計算を先に行って、大規模計算のための計算機費を次年度に回したため。
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