研究課題/領域番号 |
21K13922
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
徳田 順生 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(PD) (20881890)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 散乱振幅 / ユニタリー性 / スワンプランド条件 |
研究実績の概要 |
重力存在下においては重力子のt-チャネル交換が散乱振幅の高エネルギー極限における発散の度合いを悪くすることに起因し、従来通りのpositivity boundの導出ができないという問題がありました。しかし、紫外完遂な理論では高エネルギーにおける振る舞いが良くなると期待され、実際弦理論ではツリーレベルにおいて重い高階スピン場のタワーの励起により散乱振幅がレッジェ的に振る舞うことが知られています。これまでの我々の研究により、この散乱振幅のレッジェ的振る舞いを含むいくつかの作業仮説の下に、重力存在下においてpositivity boundは良い近似で成り立つことがわかりました。これを受けて本年度は、重力存在下におけるpositivity boundの現象論模型への示唆を研究しました。特に、素粒子標準模型における光子-光子散乱振幅と、インフレーション理論等で重要となる単一スカラー場の理論におけるスカラーの2体2体散乱振幅を重力存在下において議論しました。その結果、標準模型においては弱い力、及び強い力の存在により、重力存在下におけるpositivity boundが巧妙に満たされていることが分かりました。また、スカラー場の理論ではスカラー場のポテンシャルに対し制限が得られることが分かりました。得られた制限はプランク質量を含むもので、いわゆる「Swampland条件」として解釈され、重力存在下におけるpositivity boundを用いることで多様な模型に対し興味深い制限が得られると強く期待されます。
先述の通り、本結果は一定の作業仮説の下に得られたものです。今後、作業仮説の検証・それが成立する物理的セットアップをより詳細に明らかにしていくことで、着実に重力の量子論と低エネルギーにおける場の理論の関係性に対する理解を深めていくことができると期待しています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スカラー場のポテンシャルへの制限を導出することに成功しましたが、これは2021年度に遂行予定であった「課題I」が遂行できたことになります。それに加えて、素粒子標準模型への示唆の研究も進みました。したがって、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えられます。
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今後の研究の推進方策 |
重力存在下におけるpositivity boundは一定の作業仮説の下に得られたものです。今後、作業仮説の検証・それが成立する物理的セットアップをより詳細に明らかにしていきます。また、より多様な模型に対する現象論的帰結も議論していきます。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、多くの研究会がオンライン開催となった。また、共同研究者との議論もオンラインで行わざるを得なくなった。そのため、当初予定していた出張を行うことができなかったため。次年度では、海外学会等へ出張を行う等積極的に研究成果発表を世界に発信するために当該予算を使用することを考えている。
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