研究課題/領域番号 |
21K13924
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
富樫 甫 東北大学, 理学研究科, 助教 (70733939)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 核物質 / 状態方程式 / ニュートリノ反応 / スピン偏極 / 超新星爆発 / 中性子星 / 変分法 |
研究実績の概要 |
重力崩壊型超新星爆発シミュレーションでは、核物質状態方程式とニュートリノ反応率が原子核物理に関連する重要なインプットデータとなる。本研究課題では、近年我々が構築した現実的核力に基づく超新星爆発計算用核物質状態方程式を拡張し、任意のスピン偏極率を持つ一様核物質の熱力学量を求めることによって、状態方程式と自己無矛盾なニュートリノ・核子散乱の散乱断面積を計算し、実際の超新星爆発シミュレーションに適用することを目指す。さらに、従来の状態方程式テーブルと同様、得られた散乱断面積を密度・陽子混在度・温度に対する数値データのテーブルとして公開することも予定している。 研究計画初年度となる2021年度は、従来のクラスター変分法を拡張し、任意のスピン偏極率を持つ絶対零度一様核物質のエネルギー及び関連する熱力学量の計算を行った。従来のクラスター変分法は、スピンが偏極していない(すなわち、スピン上向きと下向きの核子数が同じ)一様核物質のみに適用可能な手法であったため、今年度の研究では変分法の根本的な改良を行い、任意のスピン偏極率を持つ一様核物質に対して有効なクラスター変分法の定式化を行った。この際には、スピン上向きと下向きの核子のFermi面の違いを考慮するだけでなく、Jastrow波動関数に含まれる二核子間相関関数に対して二核子状態のスピン第3成分依存性を導入し、スピンが偏極した一様核物質内部における核媒質効果の影響も考慮した。これらの処方によって改良したクラスター変分法は、様々な密度・陽子混在度・スピン偏極率における核物質のエネルギーを計算可能にし、さらに関連する熱力学量も妥当な振る舞いを示すことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
任意のスピン偏極率を持つ絶対零度一様核物質に対するクラスター変分法の拡張が順調に行われ、様々な密度・陽子混在度・スピン偏極率におけるエネルギーを求める数値計算プログラムの作成も完了した。さらに、得られたエネルギー、及びそのエネルギーから熱力学関係式を通して導出したその他の熱力学量についても、密度・陽子混在度・スピン偏極率の幅広い領域において妥当な振る舞いを示すことが確認できており、本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、前年度に構築したクラスター変分法をさらに拡張し、スピン偏極した一様核物質の有限温度自由エネルギーの計算を実行する。この際には、従来の研究で用いたSchmidt-Pandharipandeの変分法を拡張し、スピン上向きと下向きの陽子及び中性子それぞれに対応する平均占有確率を導入することによって、有限温度における自由エネルギーの計算を行う。さらに、上記手法を用いて「スピン偏極した有限温度一様核物質の熱力学量」を様々なスピン偏極度に対して用意し、典型的な密度・陽子混在度・温度におけるスピン応答関数を計算することも予定している。この際には、現象論的模型に基づくHorowitzらの先行研究と我々の結果を比較することにより、スピン応答関数に対する核力の効果を詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響が続いており、予定していた研究出張や国際会議への現地参加ができなくなったため、次年度使用額が生じた。2022年度は数値計算プログラムの実行に適したPC・ワークステーションを導入することも随時検討する。
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