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2023 年度 実施状況報告書

量子ブラックホールの有効理論の構築~量子重力の自由度の探求に向けて~

研究課題

研究課題/領域番号 21K13929
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

横倉 祐貴  国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 上級研究員 (50775616)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードブラックホール / 量子重力 / 半古典的アインシュタイン方程式 / ブラックホール撮像 / Bekenstein-Hawkingエントロピー
研究実績の概要

昨年度はエントロピー面積測を満たす半古典的アインシュタイン方程式の非摂動解として、量子ブラックホールモデルを直接構成した。これはホライズンを持たないが、非常に強い赤方偏移を持ち、それがどの程度観測的振る舞いと整合的であるは興味深いことである。そこで、このモデルの撮像をChe-Yu Chen氏(理研iTHEMS)と共に研究した。ブラックホールの撮像は中央の暗部を囲むリング状の明部によって特徴付けられるが、これは非常にコンパクトな天体一般で得られるものでありホライズンの存在と直接関係しない。私のモデルはホライズンを持たないため、光源から発せられた光子は内部を通過し、従来のリングとは異なる寄与を生むことがわかった。しかしそれは非常に長い時間を待った場合の理想的なものであり、物理的時間スケール(ブラックホールの蒸発時間)でみると、その非常に強い赤方偏移のためそのような寄与はほとんど消え、古典的Schwarzschildブラックホールの撮像とほぼ一致する結果が得られた。さらに、inner shadowの強度を評価するとわずかに古典的な場合に比べて明るくなり、しかもその定量的振る舞いはモデル内のパラメータ(量子揺らぎに寄与する理論の自由度や内部の相互作用の程度を表すパラメータ)と整合的であることがわかった。これはこのモデルの将来の観測予言になりうる。以上の意味で、このモデルは現在の観測データと整合的であり、量子論におけるブラックホールの有効記述になりうる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの私の研究は主に原理的側面に重きを置いたものであったが、上記研究は現象論を調べたものであり、しかもその結果はモデルの物理的構造と撮像との見事な整合性を見せている美しい結果だと思う。このような現象論的研究も含めて幅広い視点から量子ブラックホールの有効理論を考えていきたい。

今後の研究の推進方策

ホライズンという古典的特徴づけではなく、「ブラックホール=与えられた表面積に対しエントロピーを最大化させる配位」という量子論的特徴づけを研究し、その構造を特定する。これはエントロピー面積則による特徴づけを超えたより一般的なものであり、昨年度得たモデルが自然と導かれるかどうかを検証したい。また、Wheeler-De Witt方程式を用いた有効理論の研究も実行したい。現象論としては、重力波を考えてみたい。

次年度使用額が生じた理由

理由:共同研究者の所属する海外研究機関への出張を予定していたが、相手先の都合により来年度に変更した。
使用計画:上記の研究機関に滞在するとともに、複数の国際会議に参加することを予定。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Self-gravity and Bekenstein-Hawking entropy2024

    • 著者名/発表者名
      Yokokura Yuki
    • 雑誌名

      Nuclear Physics B

      巻: 1002 ページ: 116531~116531

    • DOI

      10.1016/j.nuclphysb.2024.116531

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Imaging a semiclassical horizonless compact object with strong redshift2024

    • 著者名/発表者名
      Che-Yu Chen and Yuki Yokokura
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 109 ページ: 104058

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.109.104058

    • 査読あり
  • [学会発表] 最大エントロピーを持つ量子凝縮体としてのブラックホールに向けて2024

    • 著者名/発表者名
      Yuki Yokokura
    • 学会等名
      非平衡系の物理
    • 招待講演
  • [学会発表] A semi-classical spacetime region with maximum entropy2023

    • 著者名/発表者名
      Yuki Yokokura
    • 学会等名
      KEK Theory Workshop 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] A semi-classical spacetime region with maximum entropy2023

    • 著者名/発表者名
      Yuki Yokokura
    • 学会等名
      JGRG 32
    • 国際学会
  • [学会発表] A semi-classical spacetime region with maximum entropy2023

    • 著者名/発表者名
      Yuki Yokokura
    • 学会等名
      場の理論と弦理論2023
  • [学会発表] Semi-classical spacetime region with maximum entropy2023

    • 著者名/発表者名
      Yuki Yokokura
    • 学会等名
      Quantum Field Theory in Curved Spacetimes Workshop II
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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