研究課題/領域番号 |
21K13939
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
冨田 夏希 大阪大学, 核物理研究センター, 特任研究員 (80894592)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | RPC検出器 / 飛跡検出器 / タイミング検出器 / 核子構造 / ミューオン検出器 |
研究実績の概要 |
これまで主に粒子飛行時間測定用に用いられてきた、Resistive Plate Chamber検出器を用い、粒子の通過位置と通過時間を同時に高精度で測定できる、ミューオン検出器の開発を行う。ミューオン検出器は、J-PARCにおいて、核子構造研究のための、排他的ドレルヤン反応(π-p→γ*n→μ+μ-n)測定に用いる。 RPC検出器はガラスを積み重ねた構造のガス検出器である。ガラスの外側に電圧印可用のカーボンが貼られ、さらにその外側の読み出しストリップから信号の読み出しを行う。 これまでの飛行時間測定用のRPC検出器には、幅25 mm程度の読み出しストリップが用いられてきた。位置測定用のRPC検出器では、読み出しストリップを数mm程度の幅に狭める。RPC検出器は手作業で組み立てを行う検出器である。 初年度はこの位置測定用の大型RPC検出器の製作技術の確立を行った。読み出しストリップは基盤に銅を印刷することで製作した。5 mm間隔の狭い間隔ながら、1000 mm × 500 mmの大型の読み出しストリップの製作に成功した。また、電圧印可用カーボンやガラスも、1000 mm × 500 mmの大型サイズで製作し、位置測定用の大型RPC検出器が製作できることを確認した。 また、これまでBGOegg実験やLEPS2実験で用いられてきたRPC検出器は、検出器全体をガス筐体に入れるため、アンプがガス筐体の中にあり、オペレーションが難しいという問題があった。そこでガラスのみをガス筐体の中に入れる、新しいデザインでの設計を行った。 製作したRPC検出器は、性能評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RPC検出器に用いる、読み出しストリップなどの材料の大型化に成功し、位置測定用のRPC検出器の製作技術を確立した。また、ガラスのみをガス筐体に入れる、新しいデザインのガスタイトシステムも確立した。 一方、電圧印可用の電極に用いたカーボンテープに問題があることが判明し、位置・時間分解能の性能評価には至らなかった。これまで広く日本のRPC検出器に使われてきた電圧印可用のカーボンテープは、高価で製作が難しいという問題があった。そこで本研究では、東北大での2020年の先行研究において、小型のRPC検出器を用いて高性能が確認されたカーボンテープを使用した。性能評価試験を行った所、このカーボンテープは大型化すると長時間電圧を保持できないことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
長時間電圧を印加できるカーボン塗料を用いて、RPC検出器の再製作を行う。海外のRPC検出器の電極に利用されているカーボンスプレーを用いる。製作したRPC検出器は、ビーム試験を行い、位置分解能・時間分解能・検出効率といった、基礎性能の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用したカーボン電極に、長時間電圧を保持できないという問題があり、開発に遅れが生じたため。別のカーボン塗料を用いて、再開発を行う。
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