研究実績の概要 |
前年度にすばる望遠鏡/Hyper Suprime-Cam探査のデータを使って構築した約400万個の赤方偏移z~2-7からなる大規模遠方銀河サンプルを用いて、宇宙論パラメータの一つであるsigma8パラメータの制限を試みた。z~4銀河サンプルの周りでPlanck衛星のCMB重力レンズ信号mapをstackingすることで、z~4の遠方宇宙においてCMB重力レンズ信号をはじめて検出することに成功した。さらに銀河の角度相関関数を計算し、その観測結果を用いてsigma8パラメータと大スケール銀河バイアスの縮退を解くことで、sigma8パラメータを赤方偏移4の宇宙で初めて制限した。得られたパラメータは標準的なLCDMモデルの予言に比べて少し低い値が得られたが、不確かさの範囲内で無矛盾であった。 以上の研究成果を論文にまとめ、Miyatake, Harikane et al. (2022), PHYSICAL REVIEW LETTERS 129, 061301で報告した。また本研究成果については2022年8月にプレスリリースを行った。
またJames Webb Space Telescope (JWST)の初期観測データを用いて赤方偏移z~9-16の遠方宇宙で銀河を選択し、UV光度関数および宇宙全体の星形成率密度を調べた。得られたUV光度関数はz~9においては過去のハッブル望遠鏡の結果と無矛盾であったが、z~12では銀河形成モデルの理論予測より高く、また星形成率密度もモデルに比べて減少が緩やかになることがわかった。これはz>10の遠方宇宙においては、IMFや星形成効率等がz<10に比べて異なることを示しているのかもしれない。 以上の結果を論文にまとめ、Harikane et al. (2023), The Astrophysical Journal Supplement Series, Volume 265, Issue 1, id.5, 27 pp.で報告し、複数の招待講演を含む国際・国内会議で発表した。
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