現在4000個以上発見されている系外惑星のうち最も普遍的な惑星は、太陽系には存在しない地球よりは大きく海王星よりは小さい惑星(小型惑星)である。これらの惑星がどこで形成されどのように進化してきたかを調査するには、惑星大気を直接観測し大気構造を理解する必要がある。 本研究の目的は、小型惑星大気中のヘリウム存在の有無を観測し、提唱された理論と比較することで、個々の大気構造に制約を与えることである。よって中断までの4ヶ月間は、主にすばる望遠鏡に搭載されている近赤外高分散分光装置(IRD)で観測された3天体の小型惑星について解析し、ヘリウムを検出するための手法を確立することに専念した。 本研究でターゲットとしている天体は、トランジット系外惑星探査衛星(TESS)で新たに発見された太陽系近傍のM型星まわりの惑星である。なぜなら、一回の観測で得られる光量が大きく、恒星と惑星の半径比が小さくなるため、惑星大気の情報を観測しやすいからである。しかし、恒星が近傍に存在した場合、恒星自体の空間運動による視線速度変動の影響を受ける。また、M型星は有効温度が小さくなるほどヘリウム三重線の吸収強度が小さくなり、M5型星より温度が低くなると検出できなくなる。そのため、恒星のヘリウム吸収線から相対的に惑星の吸収線の位置を決定することが不可能となり、恒星の視線速度変動を精度よく補正する必要がある。そこで本研究は、理論モデルスペクトルと比較することで個々の天体の視線速度変動を求め補正する手法を確立し、惑星大気のヘリウム吸収線を正確に検出するパイプラインを作成した。この手法は今後、近傍のM型星まわりの惑星大気のヘリウムを検出する上で重要となるだろう。
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