研究実績の概要 |
2021年度の主な研究実績は以下の通りでさる。1) 多数の銀河の分光観測データを用いて、約100億年前の銀河の若い星成分に含まれる金属イオンの割合(金属量)を推定し、金属量が銀河の質量と強い相関関係を示すことを明らかにした。また、同じ質量で比べたときに、現在の銀河よりも2~5倍程度金属量が低く、また酸素対鉄存在比が高いことを明らかにし、これらの観測結果を銀河の化学進化モデルを用いて解釈した。これらの結果は、査読付き欧文誌アストロフィジカルジャーナル誌より出版された (Kashino et al., ApJ, 925, 82, 2022)。2) 欧州南天天文台VLTを用いた強い輝線を示す赤方偏移0.8の銀河の輝線分光観測を2021年8月に完了し、データ解析を行なった。これらは「宇宙再電離」で重要な役割を果たした銀河の類自体と考えられる銀河で、詳細な観測を行うことで再電離機の銀河が再電離にどのように寄与したかについての知見を得ることを目指している。本観測により、これらの銀河が予測通り強い輝線を示すことを確認し、水素や重元素イオンの輝線強度を測定することで、ガスの物理状態を明らかにした。さらに電離ガス周辺の中性水素ガスが非常に希薄であること、これにより大量の電離光子が漏れ出ている可能性があることを示した。これらの成果は2022年3月の天文学会春季年会において報告された。現在論文を執筆中である。3) すばる望遠鏡HSCを用いて行なっている再電離期末期における大局的中性水素密度構造と銀河分布の関係の調査において、ライマンアルファ輝線銀河と呼ばれる種族の銀河では、その中性水素密度と銀河数密度の間の分散が大きいことを明らかにした。これらの結果は、欧文誌に投稿され、現在査読中である。
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