研究課題/領域番号 |
21K13957
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
早川 尚志 名古屋大学, 高等研究院(宇宙), 特任助教 (10879787)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 太陽物理学 / 太陽地球物理 / 環境史 / 太陽黒点 / 太陽活動周期 |
研究実績の概要 |
2021度はコロナ禍の影響で、海外での調査・学会報告などが困難になったため、海外との遠隔での共同研究を通して文献記録へのアクセスなど事態の克服を試みた他、特に文献史料の整理・分析に力点を置いた。この際、本研究では、特にオーストリアのウィルテン修道院の観測記録群の分析の成果を刊行した。この検討から、ダルトン極小期には黒点群数が9まで確認され、黒点分布が太陽の両半球に広がっていたことも確認された。 ダルトン極小期周辺の宇宙天気現象の検討も進んだ。特にダルトン極小期直前に発生した1788年の巨大宇宙天気現象について、日欧の史料を対象することで、その時系列を復元するとともに、規模を定量的に推定し、その成果も刊行した。 このような成果に加え、ダルトン極小期とマウンダー極小期との比較も進展している。マウンダー極小期当時の太陽活動について、サンクトペテルブルク他の原典史料の分析から、マウンダー極小期前後の太陽活動の黒点群数と黒点座標の様子も復元できた。加えて無黒点日の割合をダルトン極小期とマウンダー極小期で比較したところ、後者の方が有意に無黒点日が多くなった。このような成果はダルトン極小期とマウンダー極小期の差異を強調しつつある。 更に年輪・氷床コアの宇宙線核種やオーロラ記録を用いることで、望遠鏡による黒点観測開始(1610年)以前の類似の時期との比較についても予備的な研究が進みつつある。 現在申請者はダルトン極小期の各種太陽観測記録について、さらに同時代の別観測記録の蒐集・調査を進めている。特に本年度の検討を通して得られた黒点群数をどのように前後の時代の観測データと較正するか、ダルトン極小期とマウンダー極小期の差異が観測者依存のものなのかはたまた背景の物理機構の差異を示唆しているのかなど、検討すべき課題は少なくない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査・海外での学術報告はコロナ禍で大きく制約を受けたものの、海外のカウンターパートとの協働を通して影響を最小化し、実際に関連の学術論文を刊行しつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度より欧州側でコロナ禍の規制緩和が進んでいるため、その間に同時代観測記録を可能な限り蒐集したい。この際、ダルトン極小期周辺、比較対象となるマウンダー極小期周辺などの観測記録を積極的に蒐集し、特に、ダルトン極小期の太陽活動について2021年度に得られた成果がどの程度同時代の独立観測データから裏付けられるかなどの点について検証を進めたい。合わせて可能な限り周辺の時代との比較検討を進めることで、ダルトン極小期周辺の黒点群数の較正、マウンダー極小期ほかとの定量的な比較を試みたい。。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの変異株の発生に伴い、計画していた欧州での現地文書館調査が実現しないなど、当初の想定担い事態に遭遇したため。海外の共同研究先の協力もあり、遠隔で史料の複写を入手できた例もあり、研究そのものは進捗しているが、海外の史料調査自体はコロナ禍が緩和し次第可及的速やかに行いたい。
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