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2022 年度 実施状況報告書

活動銀河核における狭輝線領域の発現機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K13958
研究機関京都大学

研究代表者

水本 岬希  京都大学, 白眉センター, 特定助教 (10880825)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワードブラックホール / 活動銀河核 / X線天文学
研究実績の概要

活動銀河核統一モデルは,見え方の異なる活動銀河核の種族を観測方向の違いで説明するモデルであり,現在まで広く受け入れられている。このモデルでは,中心ブラックホールの近くに広い輝線を出す領域が存在し,それを コンプトン厚なトーラスが取り巻き,極方向に空間的に広がっ た狭い輝線を出す領域がある,という構造を考えている。一方で,これらの登場人物はあくまで現象論的に導入されたもので,物理的な起源や実態については未だ十分に理解が追いついていない。それらの物理的起源を迫るために,以下の研究を行った。
(I) セイファート 1 型銀河である NGC 5548 の長期間 X 線観測データから,その X 線スペクトルの複雑な時間変動を説明することを試みた。結果として,X 線スペクトルの変動は主に (1) 1 keV 以下の軟 X 線超過成分、(2) カットオフのあるべき型関数成分の強度、(3) 粗密構造を持つ吸収体の掩蔽率、という三つの成分が独立して変化することにより説明できることを見出した。この成果は論文として報告した。
(II) (I)でみつけた粗密構造を持つ吸収体に起因するX線スペクトルの変動を説明するためのモデルを作成した。それをデータに適用することで,吸収体に起因する時間変動だけを抽出できることを指摘した。この成果は論文として報告した。
(III) 上に挙げた粗密構造を持つ吸収体が,非常に速い速度を持つ電離アウトフローに匹敵する,あるいはそれより速い速度を持っていることを発見した(outer clumpy UFO)。本研究成果は現在論文投稿中である。
こうして,ブラックホール周りの構造の物理的実体を明らかにする,という本研究の目的は着実に進んでいる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

X線観測で現象論的に見られる活動銀河核吸収体の物理起源に迫るという観点で,複数の論文を投稿することができた。これにより,研究課題を大きく進めることができた。

今後の研究の推進方策

近赤外線分光観測による論文は次年度中に受理予定である。これにより,活動銀河核アウトフローが狭輝線領域に衝撃波を作り,そこでエネルギー伝達が起こるという仮説が提示される。これを固めるために,天体数を増やした観測提案を行う。
加えて,次世代X線望遠鏡XRISMのうちあげが次年度に迫っている。XRISMによりこれまでにないほどの高エネルギー分解能で活動銀河核のX線スペクトルを取得できるようになる。これにより,ブラックホールごく近傍でのガスの流れを調べることが可能となる。これは,活動銀河核を構成する様々な成分の物理実態を調べる上で強力なツールとなりうる。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍において海外出張に制限があり,一部予定していた海外出張を遂行できなかった。本年度以降に振り替えて実行する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] A novel “spectral‐ratio model fitting” to resolve complicated X‐ray spectral variations in active galactic nuclei2023

    • 著者名/発表者名
      Midooka Takuya、Mizumoto Misaki、Ebisawa Ken
    • 雑誌名

      Astronomische Nachrichten

      巻: 344 ページ: -

    • DOI

      10.1002/asna.20230039

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Simple interpretation of the seemingly complicated X-ray spectral variation of NGC?55482022

    • 著者名/発表者名
      Midooka Takuya、Ebisawa Ken、Mizumoto Misaki、Sugawara Yasuharu
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 513 ページ: 5020~5033

    • DOI

      10.1093/mnras/stac1206

  • [学会発表] X-ray Radiatively-driven extremely-fast clumpy outflow in the superEddington AGN2023

    • 著者名/発表者名
      Misaki Mizumoto
    • 学会等名
      9th Galaxy Evolution Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] エディントン光度を超えた活動銀河核におけるradiatively-driven extremely-fast clumpy absorberの存在2023

    • 著者名/発表者名
      水本岬希
    • 学会等名
      ブラックホールジェット・降着円盤・円盤風研究会2023
  • [備考] X線天文衛星のアーカイブデータから、銀河中心ブラックホール近傍のより整合的な物理モデルを提案

    • URL

      https://www.isas.jaxa.jp/home/research-portal/gateway/2022/0926/

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公開日: 2023-12-25  

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