研究課題/領域番号 |
21K13960
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平野 信吾 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (40772900)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 理論天文学 / 宇宙物理 / 数値シミュレーション / 磁気流体 / 星形成 / 宇宙の大規模構造 / 第一世代星 / 超大質量ブラックホール |
研究実績の概要 |
今年度に発表した査読論文4編の中で、本研究課題と関係の深いものは以下の1編である。 Hirano et al. (2021)の論文では、大質量初代星形成過程における磁場の影響を調べた。大質量初代星は遠方クエーサー(超大質量ブラックホール)の起源となる中間質量ブラックホールを形成すると考えられており、現在まで様々な形成シナリオが検討されている。我々はこの問題に対して、新たに磁場が及ぼす影響を調べた。磁気流体シミュレーションを行ったところ、大質量初代星が形成される星形成ガス雲では高い降着率のため多数の高密度コアが形成するが、コアの回転運動によって微弱な宇宙論的な始原磁場が急激に増幅されることが確認された。この磁場増幅は磁気エネルギーが運動エネルギーと釣り合うまで進むため、最終的な磁場強度は始原的磁場の強度に依らない。これまで行われていた初代星形成シミュレーションでは、原始星形成前の収縮期(前期段階)における始原的磁場の増幅率が議論されていたが、原始星形成後の降着期(後期段階)に起きる磁場増幅過程によって強磁場が容易に実現できることが分かった。増幅によって現れた強磁場は降着ガスの角運動量を抜き取るため、ガスの降着率を高め、また高密度コアの合体を促し、最終的に一つの大質量星を残す。従来の大質量初代星形成シミュレーションでは考慮されていなかった磁気効果が、結果的に大質量初代星の形成と質量成長を助けることを示した。 この他に、国内2件(うち招待講演2件)の学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初代星形成における磁気効果の研究として、大質量初代星形成ガス雲に対して磁気流体シミュレーションを行い、得られた結果を査読論文にまとめて出版した(Hirano et al. 2021)。その後、同様の計算を一般的な初代星形成ガス雲に対して行えるように計算コードの改修を行い、数値シミュレーションを進めている。ガス雲に与える初期磁場強度をパラメータとしており、初代星形成過程に影響を及ぼすパラメータ範囲を調べている。現在までに計算の大部分は完了しており、計算分解能の影響を確認するための追加計算が終わり次第、結果を論文にまとめる予定である。 初代星形成における相対超音速ガス流の研究として、宇宙論的シミュレーションから7つのハローを選出し、ガス流速度6通りを加えた計42モデルの流体シミュレーションを行った。重力不安定ガス雲が形成する段階まで計算は完了しており、現在結果を論文にまとめている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、引き続き研究を遂行する。磁気流体シミュレーションを用いた研究では、新たに星形成ガス雲の力学的パラメータ(質量、回転速度)をパラメータとしたモデル計算を行う。これまでのパラメータ研究の結果をまとめて、磁気効果を含めた初代星形成モデルを構築する。宇宙論的シミュレーションを用いた研究では、最初の重力不安定ガス雲が形成した後の進化を調べるため、追加の計算を行う。大質量星形成ガス雲における重力不安定ガス雲の分裂・合体過程を調べることで、初代星星団の星質量分布の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により国内・国際研究会や研究議論がすべてオンラインで行われたため、旅費の支出がなくなり次年度使用額が生じた。 翌年度分と合算した助成金・1157千円の使用計画は、物品費・400千円、旅費・500千円、その他・257千円である。
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