研究課題
星団形成領域は文字通り様々な進化段階にある天体が密集しており、特に個別の星/連星系に至る直前の高密度ガス塊が特定されておらずその性質および形成要因が理解されていないことが要因の一つである。本研究では、太陽系から最も近傍にある星団形成領域の分子雲コアに埋め込 まれている超高密度微細ガス塊をALMA望遠鏡の無バイアス広域観測により多数特定し、それらの性質を孤立した小質量星形成領域の研究で得られたものと比較する。星団形成領域における原始星形成直前のガス塊の個数およびその密度/形状や速度分布を初めて明らかにし、強い乱流場 が星形成へと至るガス密度の時間発展などにどのように影響を与えるかを調べる。数1000 auという大きさは母体分子雲と比較すると非常にコンパクトではあるが、それでも原始星円盤のスケール(数 10~数100 au)よりも大きく、空間的に広がっている。そこで本研究ではまず、日本が開発したAtacama Compact Array (ACA)のみを用いた広域観測で、6秒角(1000 au)程度の空間解像度で分子雲コアの内部の密度構造をよく反映するミリ波・サブミリ波帯の連続波および、速度構造や化 学的特徴を調べるための分子輝線観測を行う。1年目は既にデータが得られつつある南のかんむり座領域のデータ解析に注力した。その結果、分子雲コアの最も密度の高い部分を反映すると考えられる1.3mm帯連続波を解析した。その結果、おうし座領域に存在する分子雲コアに比べてより小さい領域で複数個に分裂していると思われる構造が多数明らかになってきた。
2: おおむね順調に進展している
ALMAのデータ解析が順調であるため、論文化への目処が経ちつつある。また当初は研究計画として重要視していなかったが、大マゼラン雲の巨大星団形成領域の分子雲コアを多数検出できた(2022年4月に論文の掲載が決定したため、研究業績には記載しない)ため、将来的に太陽系近傍の天体と比較を視野に入れることができると期待できる成果が得られた。
南のかんむり座領域のALMAデータ解析を引き続き推進する。また現在取り扱っているデータよりも高解像度のALMA観測を行うための観測提案書を研究協力者とともに4月に提出した。採択されれば、さらに詳細構造を探ることが可能となる。
すべて 2022 2021
すべて 学会発表 (7件)