研究課題/領域番号 |
21K13963
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
萩野 浩一 東京理科大学, 理工学部物理学科, 助教 (70762061)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ブラックホール / 超精密X線分光 / 超高速アウトフロー / モンテカルロシミュレーション / 放射輸送計算 |
研究実績の概要 |
超高速アウトフローは銀河中心の超巨大ブラックホール近傍から光速の数十%という極めて光速で鉄などの重元素を放出する現象であり、その莫大な運動エネルギーから銀河とブラックホールの共進化において重要な役割を果たしていると考えられている。本研究の目的は、XRISM衛星による超精密X線分光観測と3次元放射輸送計算により、超高速アウトフローの形成メカニズムを解明することである。 今年度は、XRISM衛星の開発を進めるとともに、XRISM衛星で観測予定の超高速アウトフロー天体であるPDS 456の観測計画の準備を進めた。特に、XRISM衛星だけでなく、異なる特徴を持った既存の観測衛星との同時観測を検討し、XRISM衛星のPDS 456の国際観測チーム内で議論を重ね、XRISM衛星による観測データの価値をより高められるような観測計画を構築した。 さらに、XRISM衛星によるPDS 456の観測から最大限の科学成果を引き出すために、現状の観測衛星によるPDS 456の観測データの解析にも取り組んだ。特に、超高速アウトフローによる吸収線構造だけでなく超高速アウトフローで反射・散乱されたと考えられる輝線構造に着目した解析、時間変動を使うことで異なる放射成分を切り分ける解析など、新たな視点を積極的に取り入れて研究を進めた。また、PDS 456だけではなく、他の超高速アウトフロー候補天体についての解析も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を実現する鍵となるXRISM衛星による超高速アウトフローの精密X線分光観測の実現に向けて、XRISM衛星による超高速アウトフローの観測計画の構築を着実に進めることができている。さらに、モンテカルロシミュレーションによる放射輸送計算の準備として計算機環境の整備も進んでいる。当初の計画通りに、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、XRISM衛星の打ち上げに向けて、XRISM衛星による超精密X線分光と並ぶ本研究のもう1つの柱である3次元放射輸送計算を用いた解析を進めていく。特に、超高速アウトフロー内部の速度・密度構造の非一様性がX線スペクトル上の吸収線構造や輝線構造に与える影響、時間変動に与える影響を実際の観測ターゲットに合わせた物理パラメータのもとで精密に計算する。これによりXRISM衛星による観測データが得られた後に、速やかに解析を進め、超高速アウトフローの形成メカニズムの解明に迫れるように準備を進めていく。
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