研究課題
現在の宇宙で見られる大質量銀河は宇宙初期には既に形成されていたことが近年示されており、このような早期に形成した銀河のさらなる質量成長を停止させる機構が必要とされている。電波銀河の放つ電波ジェット機構は有力候補である。遠方宇宙における電波銀河の探索と銀河形成との関連の調査は、大質量銀河形成を電波ジェットによる質量成長抑制の観点から理解する上で欠かせない。令和3年度は、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam (HSC)サーベイデータと電波サーベイアーカイブデータを用いて遠方電波銀河サンプルを構築し、このサンプルに対して可視光線分光観測を行った。すばる望遠鏡の観測時間を取得し、目標であった赤方偏移決定の観測を冬に実施した。観測データ解析の結果、サンプル天体の一部は目論見通り高赤方偏移天体であることを確認し、サンプル選出の妥当性を確かめた。現在はさらに詳細にデータ解析を続けており、今年度中を目標に観測結果を論文としてまとめ発表する。また分光確認天体の拡大を目的に、大型望遠鏡による分光追観測を引き続き提案している。分光観測に加えて令和3年度は測光学的赤方偏移情報を使い、遠方電波銀河のまた周辺環境を調査した。赤方偏移4の遠方電波銀河サンプルに対して、その周囲の銀河密度環境をHSCサーベイデータを用いて調査し論文として発表した。HSCサーベイデータを用いた本課題の利点の一つとして、遠方電波銀河サンプル構築とともに周囲の銀河情報も同時に取得できる点があり、密度環境調査はこの利点を活用したものである。結果は、暗い電波銀河はその時代の平均的な銀河よりも銀河が密集した環境下に存在することを示した。さらに付随するハローの質量も比較的大質量であることも明らかにした。このことは、暗い遠方電波銀河は現在の宇宙で見られる大質量銀河団へと進化することを示唆するものである。
2: おおむね順調に進展している
当初の目標であった、遠方電波銀河サンプルの大型可視望遠鏡での分光同定観測は予定通り実施できた。次年度は分光観測データをまとめ、論文として出版することが可能だと判断した。
分光観測データの解析を進め、その結果を用いて遠方宇宙での電波銀河の個数密度を導出する。個数密度を電波ジェットを持つ大質量銀河の進化予測と比較し、電波ジェットによる星形成への負のフィードバック効果が働いているかを評価する。これらの結果を分光結果とともに論文として発表する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
The Astrophysical Journal
巻: 926 ページ: 76~76
10.3847/1538-4357/ac441c