研究課題/領域番号 |
21K13969
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
濱野 哲史 国立天文台, ハワイ観測所, 特任研究員 (70756270)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フラーレン / 赤外線高分散分光 / 星間物質 / 星間有機分子 |
研究実績の概要 |
本研究は、C60に代表される閉核状の炭素分子種族「フラーレン」に着目し、星間物質中におけるフラーレンの基本的な性質を明らかにすることを目的とし、近赤外線高分散分光器WINEREDを用いた銀河系内外縁部、近傍銀河における星間フラーレンの観測を行い、その分布やガス雲の物理パラメータとの関係を明らかにするものである。 本年度は、高効率な観測の実現のために必須となる大気分散補正光学系の機構設計、詳細設計を進めた。また、最終的な目的である遠方のフラーレン分布を調べる上で、比較対象となる太陽系近傍の星間分子吸収バンド (Diffuse interstellar band, DIB) について、過去にWINEREDを用いて取得した観測データの解析を進めた。その結果、近赤外線波長域においてDIBを新たに検出し、またその性質を可視光域のDIBと比較しDIBの基本的な測定量の波長依存性が見られることを明らかにした。本研究結果について論文を現在投稿中である。さらに、フラーレンとその他の未同定DIBの間の相関関係や相関の良いDIBのグループについて研究を進めており、現在論文化の準備を進めている。この解析に伴い、分光データの解析ソフトの大幅な改修、および天体パラメータ、観測情報、測定結果を整理するデータベースの整備を行なった。2023年度に予定している本観測に向けて、装置開発、サイエンス、解析ソフト開発の面で準備を概ね順調に進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、観測に用いるWINEREDの性能向上のために開発する予定となっている大気分散補正光学系(ADC)の設計、試験観測、スペクトル解析手法の改良および既存データの解析を進める計画となっていた。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴いWINEREDを搭載するラス・カンパナス天文台(チリ共和国)のマゼラン望遠長を用いて計画していた試験観測が延期となったが、それ以外はおおむね順調に進展している。試験観測は現時点では2022年度に予定されており、2023年度に予定している本観測に向けて問題なく準備を進められると想定している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はWINEREDを用いた試験観測を行い、そこで得られるデータの解析を進め、その結果を踏まえた上で2023年度に予定している本観測に向けた観測プロポーザルの作成を主に進める。また、大気分散補正光学系の製作、インストール作業も京都産業大学の装置エンジニアグループと協力して進めていく。また、これまでに取得してきたDIBの大規模な観測データセットについて解析を進めていき、太陽近傍におけるフラーレンの分布、性質について研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、予定していた出張が取りやめとなったため次年度使用額が生じた。装置開発において必要となる物品の購入費(研究計画時点では想定していなかった物価の急激な変動の影響が見込まれる)や国内・国外の出張費として使用する計画である。
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