研究実績の概要 |
太陽系外の惑星には、円形でない軌道や、恒星の自転に対し傾いた軌道をもつものが存在する。これらの惑星系と、ほぼ円形でよく揃った惑星軌道をもつ太陽系 との差異がどのように生じたかは明らかになっていない。地上・宇宙の様々な望遠鏡で取得されたデータを組み合わせることで、[I] 惑星の軌道形状の主星質量 への依存性 [II] 恒星の自転に対する原始惑星系円盤の傾きを調べることで、系外惑星軌道の多様性の起源に迫るのが本研究の目的である。
本年度は[I]について、昨年度に得られた結果を投稿論文としてまとめる準備を行った。[II]については、現状利用可能なサンプルのみに基づく場合、恒星の自転に対する原始惑星系円盤の傾きの分布はごく一部のサンプルに結果が強く影響されており、統計的に頑強な結論を引き出すことは困難であることが明らかになった。そのためこのテーマについては一時研究を中断している。しかしその過程で、本研究で用いるような時系列測光データを用いた恒星の自転周期検出において、年齢に依存する観測バイアスが存在するという示唆を得た。そこでケプラー探査機データから自転周期が探査されたサンプルを用いてバイアスの年齢依存性を定式化する新たな方法論を確立し、年齢依存性を初めて明確に示した。この結果は2本の査読論文として出版されており(Masuda 2022a, ApJ 933, 195; Masuda 2022b, ApJ 937, 94)、恒星の自転周期を用いて年齢が決定されたあらゆるサンプルの解釈の基盤をなすものである。
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