研究課題/領域番号 |
21K13984
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
川島 由依 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (40897691)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 系外惑星 / 褐色矮星 / 原始惑星系円盤 |
研究実績の概要 |
本研究では、系外惑星大気の元素存在度から惑星の形成過程、また形成時の原始惑星系円盤の環境を解明することを目指す。そのために、観測可能な大気の元素存在度が、円盤内での惑星移動の有無や惑星の形成場所、円盤の乱流強度にどのように依存するのかを明らかにする。加えて、系外惑星や、惑星と恒星の中間質量を持つ天体である褐色矮星の大気の観測を行い、構築したモデルを適用することにより、それらの天体の形成過程を探る。 本年度はまず、観測された系外惑星大気のスペクトルから惑星大気の元素存在度や温度構造の情報を引き出す際に必要なリトリーバルモデルに、これまでの先行研究において考慮されていなかった非平衡化学の効果を導入した。構築したモデルを20個弱の高精度な観測がなされている系外惑星のスペクトルに適用した結果、いくつかの惑星について、大気化学が非平衡である示唆を得た。その結果を原著論文Kawashima & Min (2021)として発表した。 加えて、幅広いスペクトル型、すなわち質量や温度を持つ約10天体の褐色矮星を対象に、すばる望遠鏡の高分散分光器IRD (InfraRed Doppler) を用いた大気観測を行った。観測した褐色矮星のうち1天体のスペクトルに、今年度、共同研究者と開発した高分散スペクトル用のリトリーバルコードExoJAX (Kawahara, Kawashima et al. 2022)を適用した結果、大気の化学組成や温度構造をこれまでにない精度で制約することができた。また、一部の波長領域で現状のメタンの吸収線リストが不完全であることを観測的に実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、系外惑星大気のスペクトルの解釈に必要なリトリーバルモデルに非平衡化学の効果を導入した。これにより、より現実的な環境を考慮した上で、観測スペクトルからその大気の元素存在度の情報を得られるようになった。また、褐色矮星大気の高分散スペクトルを、幅広いスペクトル型をもつ約10天体に対して取得することが出来た。IRDのような幅広い波長帯で観測された褐色矮星の高分散スペクトルの例はほぼないため、非常に有用である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度観測した褐色矮星大気の高分散スペクトルについて、そのデータ解析を進める予定である。また、原始惑星系円盤の化学および物理進化モデルの構築に着手し、観測可能な大気の元素存在度が惑星の形成過程(円盤内での惑星移動の有無と惑星の形成場所)や形成時の円盤環境(乱流強度等)にどのように依存するか調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨今の半導体不足により計算機の納入に時間がかかったため、追加の計算機部品の購入が行えなかった。次年度、数値計算に必要なメモリを購入する予定である。
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