研究実績の概要 |
本年度は非晶質ケイ酸塩/CAIメルトとCOとの酸素同位体交換反応をおこなった。 フォルステライト (Fo) 組成の非晶質ケイ酸塩-CO間の同位体交換実験は、温度673から883 K, C18Oガス分圧 0.05, 0.3, 1 Paでおこなった。加熱後物質は出発物質に対して18Oに濃集しており、非晶質FoとCOガスとの酸素同位体交換の進行を示している。753から853 Kにおいて、非晶質FoのCOとの同位体交換はH2Oに対して2-100倍程度遅く、加熱時間に対して直線的な時間変化 (ガス供給律速) を示した。ガス供給律速の時の同位体交換速度を温度・COガス分圧の関数として取得した。673から703 Kでは非晶質構造内部の拡散過程に律速された同位体組成の時間変化が観察され、得られた拡散係数は非晶質Fo-H2O間の拡散係数のアレーニウスプロットの延長線上にプロットされた。このことは、非晶質構造中の拡散種は酸素原子の可能性を示す。原始太陽系円盤への応用から、非晶質Foは、ケイ酸塩-CO-H2O間の同位体交換平衡を早める触媒として働くことが解明された。 CAIメルト-CO間の同位体交換実験は、1420, 1460°C、 C18Oガス分圧 0.1, 0.5, 1 Paでおこなった。実験の結果、CAIメルトとCOとの同位体交換速度はH2Oの場合に対して圧倒的に遅いことがわかった。また、得られた酸素同位体拡散プロファイルから、CAIメルト表面でのCOガスの同位体交換効率はH2Oの場合に対して2から3桁ほど小さいことがわかった。原始太陽系円盤への応用から、CAIメルトと円盤ガスとの同位体交換速度はCAIメルト-H2O間の同位体交換速度により決定され、最高温度 (~1400°C) において溶融CAIは、水蒸気圧0.1 Pa以上の条件下で2から3日加熱されたという熱履歴が推定された。
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