研究課題/領域番号 |
21K13989
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中山 佳洋 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (30840201)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 南大洋 / 南極 / 棚氷 / 海面上昇 / データ同化 |
研究実績の概要 |
本課題は、アムンゼン海を含む西南極モデル、トッテン棚氷を含む東南極モデルの両者について開発を進めている。両地域において、棚氷の融解が南極大陸から海への氷の流出を促進し、海面上昇へ寄与することが危惧されている。海洋モデルを用いて、温かい水塊の棚氷下部への流入経路の特定と、その変動要因の理解が求められている。
西南極モデルについては、アジョイント法を用いたデータ同化を実施し、ある程度良い観測データとの一致が再現された。この課題については、すでに論文として投稿し、Geoscientific Model Development誌に掲載済みである。同時に、データ同化を実施しても、経年変動の再現性が改善されず、現モデルに含まれていないプロセスが棚氷融解や海洋場の再現性に影響を与えていることが示唆された。そこで、棚氷下部から海へと流出する氷河融解水の影響を見積もった(すでにGeophysical Research Lettersに掲載済み)。現在では、さらに、他のプロセスの寄与を調査するために、感度実験、データ解析等を進めている。
東南極モデルについては、モデルを開発した(Geophysical Research Lettersに掲載)。さらに、このモデルについて、2019年に新しく取得された海底地形データへのモデル地形の更新を行った。現在は、観測データと数値モデルの綿密な比較を行い、グリーン関数法を用いたデータ同化の準備を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
西南極モデルについては、アジョイント法を用いたデータ同化を実施することが、本課題の目的であったことから、当初の計画以上に進展していると言える。しかしながら、アジョイント法を用いたデータ同化を実施しても、経年変動の再現性が改善されず、課題が残ったため、現在は、様々な感度実験や、詳細なモデル解析を行い、その原因を追求している。
東南極モデルについては、計画通りに実施できており、概ね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
西南極モデルについては、アジョイント法を用いても期待されるほどの観測データとの一致が見られなかったことから、様々な感度実験や、数値モデルと観測データの比較を実施し、その原因の究明を続ける。
東南極域モデルについては、予定通り、観測データと数値モデルの比較を継続し、グリーン関数法を用いたデータ同化の準備を実施する。データ同化された結果をもとに、2024年3月までに論文投稿を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度の予算配分に対し、実際の支出が少なく、差額が生じたのは、以下の理由である。 (1) 初年度の旅費は約150万程度を想定していたが、コロナ禍の影響により、ほとんどの学会、ミーティングがオンラインとなった。実際に発表については、国際学会1回、国内学会2回と成果は出ているものの、データ同化の手法開発や今後の議論のために予定していたNASA JPLへの訪問、また、国際学会(EGU,AGU)などへの渡航は、延期となった。 旅程を翌年度以降に延期したため、翌年度以降の旅費として利用する。 (2) 計算機費用の支払いを予定していたが、当該科研費の初年度により本予算での支払いが不可能であった。翌年度以降の計算機費用として使用する。
|