研究課題
本課題は、アムンゼン海を含む西南極モデル、トッテン棚氷を含む東南極モデルの両者について開発を進めている。両地域において、棚氷の融解が南極大陸から 海への氷の流出を促進し、海面上昇へ寄与することが危惧されている。海洋モデルを用いて、温かい水塊の棚氷下部への流入経路の特定と、その変動要因の理解が求められている。昨年、報告したように、西南極モデルについては、アジョイント法を用いたデータ同化を実施し、ある程度良い観測との一致が見られた。この課題については、すでに論文として投稿し、Geoscientific Model Development誌に掲載済みである。また、棚氷下部から海へと流出する氷河融解水の影響を見積もった実験(Geophysical Resrach Letters掲載済み)も実施した。さらに、本年は、西南極モデルの高解像度化を行い、さらに、急激に棚氷が融解し、海面上昇に寄与しているとされるパインアイランド棚氷、スウェイツ棚氷の融解の原因を探るためのモデル解析を実施した。結果、これまで、同海域の風が棚氷の融解量を決めているという説が有力であったが、本研究の結果から、沿岸流と底面摩擦の相互作用によって、棚氷融解量が変化していることが示唆された。現在は、本解析結果を論文にまとめ、投稿準備中である。東南極モデルについては、開発済みである(Geophysical Research Lettersに掲載)。本年は、潮汐の効果をモデルの境界条件として導入した。潮汐を加えることで、大陸棚域の係留系との観測とモデルのより良い一致が見られた。この成果について、現在論文投稿に向けた準備を行なっている。また、昨年に引き続き、観測データと数値モデルの綿密な比較を行い、グリーン関数法を用いたデータ同化の準備を行っている途中である。
2: おおむね順調に進展している
西南極モデルについては、アジョイント法を用いたデータ同化を実施することが、本課題の目的であったことから、当初の計画以上に進展していると言える。さらに、本年は、高解像度か、モデルパラメータの最適化を実施し、係留観測や船舶観測と比較することで、高い観測再現性が実現できた。東南極モデルについては、計画通り実施できており、概ね順調に進展していると言える。
西南極モデルについては、過去のモデルと比較して、かなり高い観測データの再現性が実現できた。この成果について、論文にまとめ、2024年3月までに論文を投稿する。東南極域モデルについては、予定通り、観測データと数値モデルの比較を継続し、グリーン関数法を用いたデータ同化の準備を実施する。また、潮汐を導入したモデル結果についても論文にまとめ、2024年3月までに投稿する。
初年度(前年度)には、コロナ禍の影響による出張制限等で、前年度未使用額(繰越金)が約150万発生した。この繰越金は、本年度と翌年度の最終年度に旅費として使用する予定であった。そのため、前年度の繰越分の約半分にあたる金額を最終年度に繰越旅費として使用する計画としていた。予定通り、開催が延期となっていた国際学会(EGU)への渡航が実現し、本年度は支出計画通りの執行ができた。したがって、本年度に発生した未使用額については、初年度より移行した旅費として利用する計画である。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
Geophysical Research Letters
巻: 50 ページ: -
10.1029/2022GL101859
巻: 49 ページ: -
10.1029/2022GL101272
Nature Communications
巻: 13 ページ: 7840
10.1038/s41467-022-35499-5