研究課題/領域番号 |
21K13990
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 英貴 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (70868207)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 海洋炭素循環 / 海洋深層循環 / 海洋物質循環モデル / 気候変動 |
研究実績の概要 |
本研究は、炭素を含む海洋と表層堆積物における物質循環を構成するプロセス組み込んだ全球海洋大循環モデルを用いて、海洋深層まで含む全球規模の海洋炭素循環のモデリングを行い、海洋深層循環の変動が過去の大気中二酸化炭素濃度の変動に果たす役割を評価することを目的としている。 今年度は、氷期における生物地球化学特性の分布を海洋大循環モデル実験で現実的に再現するため、南大洋の深層水形成過程の表現に関わるパラメタリゼーションの導入に向けた感度実験を行った。海氷生成量に依存して高塩分水を深層に輸送するパラメタリゼーションは、元の実験の海氷場の再現性に大きく依存する。 また、氷期から間氷期の過渡応答を調べる予備的な実験を行った。南大洋の海面水温の上昇と表層において鉛直混合が増加する時期が、退氷期において大気中二酸化炭素の上昇速度が高まる時期の決定に重要である可能性が示唆され、今後の実験設計の改善に向けた手がかりを得ることができた。 さらに、プロトアクチニウム・トリウム比やネオジム同位体比の微量元素指標の氷期における観測的知見を収集するとともに、前者のモデルを氷期に適用するための準備段階として、異なる海洋循環場と生物起源粒子フラックスの条件下で感度実験を行った。 今後は、物理モデルの改善を進めるとともに、既存の海洋物質循環モデルを用いて海洋炭素循環の過渡応答とそのメカニズムを調べることを継続して実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一段階のパラメタリゼーションの開発に関しては、異なる気候の下でうまくはたらく結果が得られていないため、やや遅れているが、過渡応答を調べる予備的実験を行い、今後の実験計画に有用な結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に大きな変更の必要はなく、今後も計画通りに研究を推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、国内外の研究集会が軒並みオンライン大会となったため、旅費の使用が想定より減ったことが大きな原因である。状況次第ではあるが、研究集会への現地参加を増やす予定である。
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