研究課題/領域番号 |
21K13991
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
末松 環 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (40872544)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Walker循環 / 季節内振動 / マッデン・ジュリアン振動 |
研究実績の概要 |
本課題は、惑星規模の南北方向の大気循環であるHadley循環と熱帯域の東西の大気循環であるWalker循環が変動する時空間スケールを明らかにし、さらに、これらの大気大循環が内包するマッデン・ジュリアン振動(MJO)などの気象現象のメカニズムの理解を深めることを目的としている。今年度は、来年度実施予定の水惑星実験に前もって、現実大気のWalker循環とMJOとの関係について調べ、その関係性が全球雲解像モデルNICAMによってどの程度再現できるかについて調べた。また、水惑星実験に向けて、MJOの再現性が改善されるNICAMのパラメータ設定にについて調べ、実験設定の調整を行なった。 現実大気の解析では、Walker循環とMJOとの関係について、MJOの移動速度の推定手法を構築し、Walker循環の強弱によってMJOの東進速度が変調されることを示した。より具体的には、強化されたWalker循環に内在するMJOは東進速度が減速することを明らかにした。 さらに、ここで特定されたWalker循環とMJOとの関係はNICAMの30年程度の長期積分でも再現されることを確認した。これらの結果について、国内外の学会で発表し、現実大気の解析については論文でも発表、NICAMの解析については論文投稿中である。 今後の水惑星実験に向けて、MJOの再現性におけるNICAMの物理パラメータ依存性について調べた。ここでは特に雲微物理パラメータへの依存性を調べ、来年度以降の水惑星実験で採用するパラメータを決定した。この結果については国内外の学会発表にて発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題で使用予定の大気モデル、NICAMの長期積分中のマッデン・ジュリアン振動(MJO)の再現性について解析した結果、MJOの再現性やウォーカー循環の再現性について課題があることが判明した。そのため、水惑星実験実施前に、当初予定外だったNICAMが再現する大域的な循環場とMJOの間の関係性やモデルのバイアスについて明らかにするための解析と、モデルのパラメータ設定の再調整を実施した。これらの調査のため、当初予定していた水惑星実験の実施が来年度に持ち越されているが、次年度中に遅れは取り戻せる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
前年度中の研究で再調整したマッデン・ジュリアン振動の再現に適したモデル設定を用いて予定していた水惑星実験を大気モデルNICAMで実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染の拡大により、研究成果を現地開催の学会で発表できず次年度使用額が発生した。
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