令和5年度は過去2冬期に得た観測データを用いて、既存の新積雪の圧密の理論と比較研究を行った。観測データは1時間毎と数時間毎に観測したものに分け、1時間ごとに得られたデータを基に新雪の圧密の理論計算を行い、実際に得られた数時間後の積雪深と比較した。その結果、両者は概ね一致したものの、一部理論値よりも観測値の方が大きくなる事例が見られた。その理由を調べるために、新積雪の観測を実施した場所で行われている気象観測データや、降水粒子の粒径等を取得可能なディスドロメータから得られるデータを確認し、気象要素からの原因の推定を実施した。また冬季は、その理由を明らかにするべく、新たな観測系も立ち上げて観測した。新たな観測系では雪板に雪を積もらせた後、温度コントロール可能な低温室に移し、定期的な断面観測とX線CT画像の撮像を実施し、より精緻なデータの取得を目指した。令和5年度は暖冬の影響で降雪日が少なく、観測が期待通りに進まなかったものの、取得できた事例の解析を通じて今後の観測の方向性を確認し、これまでに得られたデータと合わせて解析した。 本研究課題では、雪崩の発生原因となる降雪結晶起源の弱層形成を理解するために、降雪結晶形状を模した非球形粒子のモデル計算を実施し、また、モデル中で考慮が難しいその変態過程を明らかにするために野外観測を実施した。加えて、雪崩危険箇所を推定したのちに重要となる、雪崩の流動範囲の図示についての研究も実施した。それぞれは別個に実施されており、これらの統合が今後の課題として残る。
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