研究課題/領域番号 |
21K13995
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
近藤 圭一 気象庁気象研究所, 気象観測研究部, 併任(第三研究室) (00735558)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 非ガウス分布 / 地表面射出率 / 地表面温度 |
研究実績の概要 |
台風や集中豪雨等の顕著現象には非線形性が強い共通点があり、その強非線形性に起因する非ガウス分布を適切に扱うことが顕著現象のさらなる予測精度向上のため重要となる。本研究では大気モデルが持つ強非線形性に起因する非ガウス分布を適切に扱える非ガウスデータ同化手法の確立を目指している。 これまで気象庁現業全球数値予報システム相当の実験システムを用いた調査として、非ガウス分布の特徴について調査を行ってきた。現業システムにおいては、マイクロ波サウンダ輝度温度を同化する際には、放射計算に使う地表面射出率に気候値データを使用しているが、地表面射出率は時空間変動の大きく気候値では精度が不十分であることが知られている。それを改善するため、射出率の動的推定手法であるDynamic emissivity (Karbou et al. 2006) を導入してインパクト調査をしてきた。しかしながら、放射計算における誤差要因は射出率だけでなく、地表面温度も重要であることがわかってきた。そこで本年度は、地表面温度について調査を行ったところ、数値モデルと衛星観測による地表面温度は10度程度も違うことが明らかになった。そこでDynamic emissivityを拡張することで射出率に加え地表面温度も動的推定する手法を考案し、実験システムに実装して実証を行った。その結果、地表面温度も動的に推定することで、射出率と地表面温度の不確実性が低減し、で第一推定値と観測の差分が統計的にガウス分布に近づくことを確認した。それによりDynamic emissivityの効果がより強化されたと考えている。 また別の観点として、観測が予報に与えるインパクトFSOIとガウス分布の特徴について気象庁現業全球数値予報システム相当の実験システムを用いた調査を行った。しかし現状では、予報を改善する観測とガウス分布について明確な関係性までは確認できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現業システムを使った調査によって、数値予報システムにおける非ガウス分布の取り扱いとして、観測演算子や品質管理を高度化することで対処できることもあるという知見が得られてきた。そのため、粒子フィルタの研究開発においては、適切に現実的な非ガウス分布を評価する必要があると考えられる。また、粒子フィルタの安定動作のためには、事前分布から事後分布への変換行列作成が重要であることは前年度からの課題であり、解決に時間を要している。アンサンブルカルマンフィルタに粒子フィルタを組み込むハイブリッドでは影響は小さいと考えられるものの、粒子フィルタの安定動作には重要である。
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今後の研究の推進方策 |
粒子フィルタの変換行列作成について引き続き改良を進めることと並行して、簡易大気大循環モデルを用いたハイブリッド同化手法について論文化を進める。 また、気象庁現業システム相当の実験システムを用いたハイブリッド同化手法の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の支払請求額については概ね使用できたものの、前年度未使用額については使用できなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度の使用計画として、国際学会参加、論文投稿等を予定している。
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