研究課題/領域番号 |
21K14003
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 淳路 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (60817419)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 宇宙線生成核種 / 10Be / 26Al / 生成率 / 年代測定 / 表面照射年代 / 地球磁場 / 岩石なだれ |
研究実績の概要 |
宇宙線生成核種(10Be,26Al)を用いた年代測定法は,古気候学や地形学において幅広く利用されている.この年代測定法では,宇宙線による反応で生じた核種の蓄積量を年代に換算する.この時,宇宙線生成核種の生成率(1年間あたりに岩石中に生じる10Beや26Alの量)が年代換算を左右する重要なパラメータとなる.宇宙線生成核種の生成率は,地球磁場の変動に伴って過去2万年間にわたり減少してきたと考えられている.しかしこれまでの研究では,特に若い年代の範囲において,生成率の実測データが不足していた.そこで本研究は,宇宙線の照射開始の年代が独立的に明らかにされている巨礫を利用し,宇宙線生成核種の生成率を明らかにする. 初年度である2021年度はまず,過去2万年間の地球磁場の変動による緯度経度毎の核種の生成率の変化について,数値シミュレーションを行った.次に5 m メッシュの数値標高モデルを用いて,岩石なだれ地形の解析を行い,試料採取地点の選定を行った.これらの結果から,必要な分析精度と必要な測定のバックグラウンドの検討を行った.さらにこれらの結果にもとづき,宇宙線生成核種の分析の前処理方法について改良を重ねた.イオン交換樹脂を用いた元素の分離を行う際の酸溶液の種類と濃度について検証し,誘導結合プラズマ発光分光分析によって収率を確認した.その結果,これまでよりも目的元素の収率よく試料の精製を行うことができるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宇宙線生成核種を用いた年代測定における年代換算法の構築に必要な,地球磁場の変動による核種生成率の数値シミュレーションを行った.また,5mメッシュの数値標高モデルを用いて,岩石なだれ地形の解析を行った.さらに試料処理における収率を誘導結合プラズマ発光分光分析により確認し,イオン交換樹脂を用いた元素の分離を行う際の酸溶液の種類と濃度について検証した.その結果.最適な試料処理方法を確立した.
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今後の研究の推進方策 |
粉砕した試料の磁性分離を行い,超音波洗浄による酸処理によって石英を回収する.石英の溶解前に,石英試料の純度について誘導結合プラズマ発光分光分析によって確認する.次にイオン交換によって目的元素を分離し,同位体比の測定を共同利用にて東京大学総合研究博物館の加速器質量分析器を用いて行う.得られた宇宙線生成核種の生成率の実測値と,地球磁場モデルからの予測値を比較し,年代換算に用いる核種の生成率変動を制約する.これによって宇宙線生成核種を用いた年代測定における年代換算法を新たに構築する.
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次年度使用額が生じた理由 |
耐酸ホットプレートの購入を次年度としたため次年度使用額が生じた.耐酸ホットプレートは2022年度に購入予定である.
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