研究課題
本研究は過去1000年前程度の若い年代における,宇宙線生成核種(10Be,26Al)の生成率を求めることを目的とする.宇宙線生成核種の生成率とは,宇宙線による反応によって岩石中で1年間あたりに生じる10Beや26Alの量である.この生成率は,宇宙線生成核種を用いた年代測定法において,年代換算を左右する重要なパラメータとなる.これまでの研究では宇宙線生成核種の生成率の実測データは,主に過去1万年前から2万年前までのデータに偏っている.そのため,若い年代範囲は地球磁場強度が異なるにも関わらず,年代換算の根拠とするデータが不足していた.宇宙線の照射を受けることとなった地質イベントの年代が独立的に明らかになっている岩石を採取することを目的とし,赤石山脈東北部,鳳凰三山東斜面に位置する岩石なだれの調査を行った.この岩石なだれは,花崗岩斜面の大規模な崩壊により形成されたものであり,径が数m以上の巨礫が岩塊流状に積み重なっている.試料採取では,安定して宇宙線生成核種が蓄積してきたと考えられる巨礫上から試料を採取する必要がある.そこで数値標高モデルから作成した図による地形判読をもとに現地を詳しく踏査し,ローブ状の微地形の形状と位置を再確認した.調査結果をもとに,2つの測線に沿った複数の地点から岩石試料を採取した.採取した岩石試料は粉砕後,篩にかけ,磁性分離を行った.試料の化学処理は,前年度に改良を重ねた酸処理法により行った.地球磁場モデルについては,モデルによる非双極子成分の違いについて検討を進めた.
2: おおむね順調に進展している
赤石山脈東北部,鳳凰三山東斜面に存在する岩石なだれの調査を行い,巨礫上から試料を採取した.試料採取ではローブ状の微地形の踏査を行い,巨礫が安定的に位置していたと考えられる地点から試料を採取した.岩石試料は粉砕後,篩にかけ,磁性分離を行った.その後,前年度に改良した手法により化学処理を行った.
引き続き試料の化学分析を進め,試料採取地域における宇宙線生成核種の生成率を求める.これまで地球磁場モデルは複数提案されているが,古地磁気データのコンパイル方法の違いから,非双極子成分の寄与に地域差がある.本研究から求めた若い年代での核種の生成率データと,既存の生成率データを合わせたデータセットを構築し,年代換算に用いる地球磁場モデルを制約する.
宇宙線生成核種の分析測定費用が予定よりも少額であったため次年度使用額が生じた.2024年度に分析測定費用として使用する予定である.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Bulletin of the Geological Survey of Japan
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10.9795/bullgsj.74.2_71
地球化学
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