2024年度は東北日本前期石炭紀付加体(根田茂帯綱取ユニット)およびペルム紀-ジュラ紀付加体(根田茂帯滝ノ沢ユニットおよび北部北上帯)において、砕屑岩に含まれる砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定および微量元素測定から、後背地の花崗岩バソリス形成・消滅時期の制約と、その形成プロセスの推定を試みる研究を行い、以下のような研究成果が得られた。 根田茂帯綱取ユニットにおける研究から、前期石炭紀付加体や低温高圧型変成岩にシルル紀-デボン紀のジルコンが豊富に含まれ、前期石炭紀ジルコンはほとんど含まれないことから、前期石炭紀はアジア大陸東縁部に花崗岩バソリスの形成が不活発であったことが示唆された。さらに、450Maを境にそれまでに存在していた大陸地殻の大規模除去プロセスが働いた可能性が示唆された。 また、根田茂帯滝ノ沢ユニットおよび北部北上帯における研究から、ペルム紀付加体に物質供給を行ったペルム紀花崗岩ばソリスは比較的未分化な海洋性島弧のような環境で形成されたのに対して、ジュラ紀付加体に物質供給を行ったペルム紀花崗岩は比較的成熟した大陸弧のような環境で形成されたことが示唆された。以上のことから、ペルム紀から三畳紀の間に、アジア大陸最縁辺部に分布したペルム紀花崗岩が構造侵食等により大規模に消滅したことが示唆された。 本研究期間を通じて、アジア大陸東縁部では構造侵食等による花崗岩バソリスの形成・除去プロセスが顕生代を通じて複数回働いたことがジルコンの地球化学的研究から明らかにされた。
|