2023年度は2021年度に開発、2022年度に論文掲載されたGNSSに基づくInSAR大気遅延補正手法の改良版として全球大気モデルを組み込んだ手法の開発・検証を、2022年度に引き続き行なった。2022年度は暫定的にGNSSに対する全球大気モデルERA5の重みを1/10と手動設定して組み込んだ場合の補正効果を検証していたが、2023年度には重みの客観的な設定アルゴリズムや遅延量推定時の空間スムージング強度の客観的推定方法を導入すべく、RMSEに基づく最適解探索やABICに基づくスムージング最適化などの効果を検証した。結果的にABICに基づくスムージング最適化は一定程度の補正効果を示したものの、その他ののRMSEを用いた手法などは妥当な推定結果が得られず、本手法には適切でないことが明らかとなった。またABICを用いた遅延量推定において、一部の推定結果で観測データの異常値に大きく影響された非現実的な解となってしまうケースがあったため、異常値の特定、分離手法の開発検証を進めた。まだ完成には至っていないものの、遅延量推定を2回行い、1回目の推定結果から事前に定めた閾値に基づいて異常値を特定、削除した上でもう一度遅延量推定を行うというアルゴリズムにより、異常値の分離可能性があることが分かった。この閾値設定方法はまだ確立できていないが、引き続き解析検証を続けることで実用的な設定が可能になると考える。また、本研究計画において最終年度に考えていた手法の公開についてはまだ実現できていないものの、本研究計画終了後も公開に向けて取り組んでいく。
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