研究課題
本研究の目的は、過去の巨大地震に伴う地滑りで移動した巨大な岩塊(巨礫)の移動履歴を、地磁気を利用した年代測定から解明し、活断層型巨大地震の評価に活かすことである。そのために初年度は、岐阜県郡上市や本巣市周辺に点在する1586年の天正地震や1891年の濃尾地 震に関連した地すべり地形を調査し、巨礫試料の採取を行った。採取した試料は、1つしかないため、正確な年代算出には至らなかったが、今後も継続して試料採取と実験を実施する。また、従来の地磁気年代測定が実際よりも古い年代値を算出する問題を解決するため、2020年度から助成を受けていた研究スタート支援と連動して、緩和関数の物理仮定からのずれと磁性粒子の分布を関連させて磁気測定を実施してきた。その結果、石垣島の年代が分かっている巨礫試料に関して実験を行い、粗粒な磁性鉱物が混入していることで従来理論からずれるが、拡張型の理論を用いることでその補正が可能であることがわかった。この結果をまとめて国際誌に投稿した。
3: やや遅れている
本年度は試料採取と文献調査を主に実施し、拡張型磁気緩和理論の背景を数理的に研究した。一方、研究スタート支援の助成最終年度ということもあり、多量の試料を用いた実験を行う時間が確保できなかった。
岐阜県の地すべり地形の調査を実施し、巨礫試料と堆積物中の有機物などを採取して、地磁気年代測定と放射性炭素年代の測定を実施していく。また、熱消磁の際には、化学残留磁気などの影響を抑えるため、岩石薄片を作成し、石基または斑晶部分を物理的にクリーニングする予定である。上記の研究成果をまとめて、国際誌へ投稿し出版できるように研究を推進していく。
本年度は野外調査を1度しか実施できず、予定よりも使用額が下回ってしまった。次年度は複数回の野外調査を実施するとともに、実験を計画的に行うことで適切に予算を使用する予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 126 ページ: e2020JB019518
10.1029/2021JB023027