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2021 年度 実施状況報告書

遠洋性褐色粘土の微量構成成分に記録された地球史の解読

研究課題

研究課題/領域番号 21K14011
研究機関東京大学

研究代表者

大田 隼一郎  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70793579)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード遠洋性堆積物 / レアアース泥 / 年代決定 / オスミウム同位体比層序年代 / ルテチウム-ハフニウム放射年代 / 微化石 / 鉱物学的分析
研究実績の概要

本研究は遠洋性褐色粘土を対象として、オスミウム、および、ルテチウムとハフニウムの同位体分析を用いた正確な年代決定と同時に、微量構成成分の特徴を把握することによって、遠洋性褐色粘土に記録された過去の地球環境変動記録を読み解くことを目的として研究を実施している。本研究は、①正確な年代決定、および、②微量構成成分の特徴の把握を二つの主な研究項目とし、これらを並行して実施を進めている。当該年度においては、①正確な年代決定について、まず、オスミウム同位体比データを、少量の試料から効率的に得るための新たな分析手法を開発した。この手法においては、同位体比測定に非常に高感度な検出器を用いることで、消費試料量を従来の10分の1に抑えることに成功した。また、ルテチウムとハフニウムの同位体比を用いた年代決定手法を確立し、それを多くの試料に対して効率的に適用するために、分析手順の検討を行った。この手法においては、海底堆積物中で魚の骨の化石に保持されているルテチウムを希酸で抽出することで、不純物の影響を排除した正確性の高い分析を目指したが、この手法ではハフニウムがうまく抽出されず、測定が難しいことが明らかとなった。②微量構成成分の特徴把握については、中央太平洋の4か所から採取されたレアアース泥について、化学組成分析および鉱物学的分析を実施し、中央太平洋において初めて高品位なレアアース泥を発見した。さらに、鉱物組成に基づいたレアアース泥の分類の結果、当該海域では、2種類の沸石(十字沸石、クリノプチロライト)に富むもの、および、鉄酸化水酸化物に富むもの、の計3種類のレアアース泥が生成したことが明らかとなった。また、白亜紀に生成したレアアース泥について、魚の骨の化石と特殊な底生有孔虫群の個体数分析を行った結果、白亜紀においてレアアース泥の生成と生物活動の活発化が連動していることを初めて明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の進捗状況について、まず①正確な年代決定については、オスミウム同位体比分析手法の改良により、一度の分析における最大分析試料数を、従来の十数試料から30試料へ増加させることで、年代決定に必要なデータを効率的に得ることが可能となった。ルテチウム-ハフニウム同位体比を用いた年代決定については、同位体分析器を用いて測定する手法は確立したものの、正確な年代地を得るための試料の前処理手法を改善する必要がある。②微量構成成分の把握については、遠洋性粘土に含まれる沸石類(十字沸石およびクリノプチロライト)の分類から堆積物の生成環境を推定できることが明らかとなってきた。また、遠洋性粘土に含まれる魚の骨の化石と特殊な底生有孔虫群の個体数分析という世界初の分析手法を適用し、さらにそれを化学組成分析と年代決定を組み合わせることで、遠洋性粘土に記録された過去の地球環境変動、生物活動、物質循環、元素農集を統一的に明らかにできることがわかってきた。以上のように、本研究は遠洋性粘土を用いて古海洋・古環境学および資源工学分野において画期的な成果を得つつあるため、おおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

本研究課題の今後の推進方策について、まず①正確な年代決定については、②の微量構成成分の把握を実施した遠洋性粘土試料に対して、新開発したオスミウム同位体比分析手法を用いて信頼性の高い高解像度な年代値を得るためのデータを蓄積する。ルテチウム-ハフニウム同位体分析については、ハフニウムを十分に抽出するために、正確な同位体比を乱す要因を、化学洗浄や粒度選別で堆積物から除去し、より濃度の高い酸で抽出する手法を試みる。その上で最終的に得られたデータと年代値から、さらに正確性と効率性を高めるために手法を改良していく。②微量構成成分の把握については、当該年度における白亜紀の遠洋性粘土の分析によって、分析手法を確立することができたと同時に、これまでに知られていなかった地球の物質循環の一面を明らかにできることが分かってきたため、今後は分析の解像度を高めつつ分析対象年代を新生代、および、白亜紀の古い時代にまで拡張し、①の年代決定と合わせて、新たな地球の物質循環モデルの構築を進める。

次年度使用額が生じた理由

本研究の微化石分析に必要となる特注のシャーレ、海外製ふるい、顕微鏡関連製品、および、同位体分析で必要となるフッ素樹脂製容器を購入する予定であったが、いずれの製品も昨今の物流の停滞、半導体不足により納期が大幅に遅延し、当該製品について次年度に支出することとなったため。次年度使用額は、当該製品の支出のために速やかに使用されるため、翌年度分は計画通りに使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Scripps Institution of Cceanography(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Scripps Institution of Cceanography
  • [雑誌論文] Geological features and resource potential of deep-sea mud highly enriched in rare-earth elements in the Central Pacific Basin and the Penrhyn Basin2021

    • 著者名/発表者名
      Ohta Junichiro、Yasukawa Kazutaka、Nakamura Kentaro、Fujinaga Koichiro、Iijima Koichi、Kato Yasuhiro
    • 雑誌名

      Ore Geology Reviews

      巻: 139 ページ: 104440

    • DOI

      10.1016/j.oregeorev.2021.104440

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 膠着質底生有孔虫を用いた北西太平洋における白亜紀後期のレアアース泥堆積環境に関する研究2021

    • 著者名/発表者名
      近藤 勇太、大田 隼一郎、安川 和孝、中村 謙太郎、藤永 公一郎、加藤 泰浩
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2021年大会
  • [学会発表] Os同位体比層序に基づく南鳥島周辺深海堆積物の複数のレアアース濃度ピークの堆積年代2021

    • 著者名/発表者名
      小田 裕太、大田 隼一郎、田中 えりか、安川 和孝、桑原 佑典、矢野 萌生、藤永 公一郎、中村 謙太郎、加藤 泰浩
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2021年大会
  • [学会発表] Os同位体分析に基づく古第三紀超温暖化イベントにおける化学風化フィードバックの考察2021

    • 著者名/発表者名
      池上 翔、安川 和孝、田中 えりか、大田 隼一郎、桑原 佑典、矢野 萌生、藤永 公一郎、加藤 泰浩
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2021年大会
  • [学会発表] 有機物に富む堆積物試料の簡便かつ迅速なRe-Os同位体分析手法の開発2021

    • 著者名/発表者名
      矢野 萌生、大田 隼一郎、野崎 達生、加藤 泰浩
    • 学会等名
      日本地質学会第128年学術大会
  • [備考] Junichio Ohta, a geoscientist

    • URL

      https://junigeo.com/

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公開日: 2022-12-28  

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